研究課題/領域番号 |
18H02345
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
太田 利男 鳥取大学, 農学部, 教授 (20176895)
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研究分担者 |
高橋 賢次 鳥取大学, 農学部, 准教授 (00400143)
稲波 修 北海道大学, 獣医学研究院, 教授 (10193559)
今川 敏明 北海道大学, 理学研究院, 特任准教授 (20142177)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 疼痛 / 侵害受容 / チャネル |
研究実績の概要 |
炎症や癌などの病態や刺激性化学物質によって生じる病態痛の分子基盤として、近年種々の侵害受容チャネルの関与が示唆されている。痛み刺激を受容する代表的なチャネル分子としてTRPV1及びTRPA1チャネルがあり、申請者らはこれまで、これら侵害受容チャネルに対する薬物応答やその制御作用について検討してきた。本年度は炎症性疼痛や侵害受容性疼痛の発現に重要な役割を果たしている侵害受容性TRPA1チャネルと低閾値型Caチャネルとの機能的関連性について、知覚神経細胞を用いて解析した。その結果、TRPA1チャネルが低閾値型Caチャネルを介したCaイオンによって調節性に制御されていることを明らかにした。野生型マウス及びTRPA1遺伝子欠損マウスから知覚神経細胞を単離し、細胞内Ca濃度変化を蛍光イオンイメージング法を用いて検討した。静止レベルより若干高いカリウム濃度溶液(15mM)により知覚神経細胞の細胞内Ca濃度が増加し、この反応は低閾値型Caチャネル阻害薬によって抑制され、このカリウム濃度でのCa増加に低閾値型Caチャネルの活性が関与することが分かった。更に、リアルタイムPCR及びウエスタンブロット解析により知覚神経細胞にはTRPA1に加えて、低閾値型Caチャネルが発現していることが示された。選択的TRPA1阻害薬は15mMカリウムによるCa増加反応を可逆的に抑制した。一方、TRPA1阻害薬によるこの抑制作用は、TRPA1遺伝子欠損マウス由来細胞では見られなかった。起炎性物質の適用による亜急性炎症病態モデル動物では15mMカリウムによる細胞内Ca増加反応は増大し、その作用はTRPA1の活性増加に依存していた。これらの成績から、知覚神経では、軽度脱分極反応による細胞内Ca増加により、TRPA1チャネル活性が増強されることから、両チャネルが機能的な相互作用していることが示唆された。また、両チャネルを介する作用は炎症病態における疼痛伝達の増大に寄与することが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで明らかにされていなかった侵害受容性TRPA1チャネルと低閾値型Caチャネルの機能的相互作用の可能性、並びに両チャネルの病態痛における役割について明らかにすることが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
侵害受容体に作用する薬物反応とその機序の検討および急性及び亜急性疼痛状態における侵害受容体と他のイオンチャネルとの相互作用を更に検討することにより、疼痛メカニズムの基礎的知見を得て、疼痛治療への応用へと研究を進めて行く予定である。
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