研究課題
本研究課題の目的達成のために計画している研究項目は、(1)モデル動物を用いた検証、(2)分子経路の同定、(3)実証研究の3つである。最終的にはこれらの結果を総合的に考察して、小胞体ストレス性Fanconi症候群の疾患概念の確立とそれに基づく治療・診断シーズの提案、および腎における物質代謝学分野の理解を進展させる。2020年度には、これまでに得た結果に基づいて、上記項目(2)の分子経路の推定および、(3)実証研究を行った。まず、(2)の分子経路の推定の精度を向上させるために、これまでに用いてきた自然発症ERストレスモデル(モデルA)における遺伝子発現の週齢依存性を検討した。モデルAでは、1週齢から4週齢においてERストレスが生じていた。続いてこのモデルを用いて、2019年度の研究からERストレスとの関連性が疑われた2種類のトランスポーター関連遺伝子、および4種類の先天性Fanconi症候群の原因遺伝子発現について調べた。その結果、ERストレスと並行して発現量が変化する遺伝子は、トランスポーター関連遺伝子およびFanconi症候群の原因遺伝子いずれも1種類ずつだった。次に、(3)の実証研究を行った。実証研究では、イヌの先天性Fanconi症候群の腎組織を入手できたので、それを用いて検討した。その結果、先天性Fanconi症候群の腎組織においても、我々がこれまでに発見してきたERストレスバイオマーカータンパク質の発現が変化していたことを確認した。以上の知見を含めてこれまでの研究から、腎に小胞体ストレスが生じるとFanconi症候群様症状が生じること、そしてそのメカニズムには少なくとも2種類の遺伝子が直接症状と結びついていること、また、ERストレスバイオマーカータンパク質がFanconi症候群の診断上有用であることなどが示唆された。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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International Journal of Molecular Sciences
巻: 21 ページ: 4288
10.3390/ijms21124288