研究課題/領域番号 |
18H02349
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
鳩谷 晋吾 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 准教授 (40453138)
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研究分担者 |
杉浦 喜久弥 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 教授 (30171143)
西田 英高 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 准教授 (00622804)
井上 徳光 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (80252708)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | iPS細胞 / イヌ / MSC / 血液 / 多能性幹細胞 / 間葉系幹細胞 / PBMC |
研究実績の概要 |
1.血液細胞からイヌiPS細胞作製の改良: 昨年度は、侵襲性が低く容易に採取可能な血液細胞からイヌiPS細胞の作製を試みたが、iPS細胞の初代コロニーの出現率が非常に低く、さらにテラトーマ形成能がなかった。これらを改善するために、イヌ末梢血単核球(PBMC)を初期化する際の最適な培地および低分子化合物の添加について検討し、初期化効率の改善およびイヌiPS細胞株の樹立を試みた。その結果、健常犬から採取・分離したにPBMCにSeVdp(KOSM)302Lでヒト山中4因子遺伝子を導入し、初期化時に低分子化合物カクテルを添加したN2B27培地を用いることで、イヌiPS細胞初代コロニーを高効率に得ることに成功した。このiPS細胞は、長期継代可能であり、各種未分化マーカーに陽性を示した。さらに、免疫不全マウスに接種することによりテラトーマ(奇形腫)の形成が可能となった。この手法によって、複数のイヌのPBMCからもiPS細胞株を樹立することが可能であり、再現性の高い方法であることが確認された。 2.MSC分化能の検討:昨年度は、イヌiPS細胞から胚葉体を介してMSCへの分化を試みた。その結果、イヌiPS細胞株によって分化能に差が認められることがわかったが、十分にMSCへ分化させることができなかった。そこで、本年度はイヌiPS細胞を側板中胚葉または神経堤細胞を経由した方法でMSCへ分化誘導し、MSCの効果的な作製方法を検討した。その結果、側板中胚葉を経由した方法よりも、神経堤細胞を経由した方法を用いて、さらに培養に特定の無血清培地を使用することで、高い増殖能を持ち、MSC陽性マーカー高発現のMSC様細胞が得られた。 以上のことから、イヌ末梢血単核球からテラトーマ形成能のあるiPS細胞の作製に成功した。また、イヌiPS細胞から効果的にMSC様細胞へ分化させることが可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
世界で初めてイヌの血液細胞から遺伝子挿入のないウイルスフリーなイヌiPS細胞の作製に成功した。この方法で作製されたイヌiPS細胞はテラトーマを形成し、さらに再現性も十分に確認できていることから十分な目的を達成している。また、イヌiPS細胞からMSCへの分化を複数の方法で検討したところ、効果的に分化させることが可能となった。これらの研究結果から研究は順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
血液の末梢血単核球だけでなく、さまざまな体細胞から複数のイヌiPS細胞株を樹立する。さらに、今後は、樹立したiPS細胞を大量に増やすための培養条件を検索する。特に、幹細胞を大量培養するため、マウス胎子線維芽細胞をフィーダー細胞として使用しない培地および細胞外基質を用いた培養方法の検討を行うとともに、培養に添加するサイトカインの種類について詳細に検討する必要がある。 また、MSC分化能は、iPS細胞株の種類によって大きく異なる可能性がある。複数のiPS細胞株を準備し、MSCに分化しやすい細胞株を見つけることで、一層研究が推進すると考えられる。さらに、臨床応用するためには、iPS細胞から分化誘導したMSCの性状を解析する必要がある。特に。免疫調節能を持つかについてin vitroでの検討が必要となる。
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