研究課題/領域番号 |
18H02350
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
柏本 孝茂 北里大学, 獣医学部, 准教授 (50327459)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 新規病原遺伝子同定法 / 敗血症 / ビブリオ / 人食いバクテリア / 好中球 |
研究実績の概要 |
V. vulnificusは感染者体内で極短時間内に増殖するため、医療機関を受診する時点で既に菌数は相当数に達しており、抗生物質療法も功を奏さないケースが多い。敗血症患者を救うためには、抗生物質療法に加えて、感染局所あるいは全身循環中におけるV. vulnificusの増殖を制御する治療法が必要である。 我々の研究グループは昨年度、新規網羅的病原遺伝子同定法 (ISLAP法) を開発し、生体内におけるV. vulnificusの好中球逃避機構に関与する複数の遺伝子の同定に成功した。これら遺伝子のKO株をマウスに接種すると、KO株が好中球に処理され、マウスの生存時間は延長することを確認済みである。本研究計画内では、この内、ゲノム上に連続して存在していた2つの遺伝子の機能解明を目的とする。申請者らのグループが独自に開発した新規病原遺伝子同定法であるISLAP法により、V. vulnificusが好中球からの逃避に必要とする遺伝子を網羅的に同定した。それら好中球からの逃避に必須と考えられる遺伝子のうち、VV1_0055とVV1_0056 (以下、0055と0056) はゲノム上に連続して位置しており、データベースによる機能予測の結果、菌体外膜へのタンパク質輸送に共同して関与すると推察された。 0055および0056変異株とそれぞれの相補株を用いた詳細な解析の結果、0055および0056変異株に共通して、ペリプラズム領域における分子シャペロンであるGroELの量的減少が起きていることを発見した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概ね計画通りに進んでいる。しかし、当初、0055あるいは0056の欠損により、菌体表面が変化するため好中球の貪食を受けやすくなっていると考えていたが、両遺伝子の欠損によりペリプラズムに存在する分子シャペロンGroELの量的減少が生じていることが明らかとなった。したがって、当初の菌体表面分子の解析計画から、ペリプラズム領域のGroELの局在と好中球逃避機構の関連性の解析へとシフトする。
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今後の研究の推進方策 |
GroELと0055および0056の相互作用が好中球からの逃避に関与しているのか否かを明確にするため、作製した両変異株とその相補株を用いて多角的基礎データを収集する。 1)GroELのペリプラズムにおける量的変化を制御可能な変異株の作製を試みる。 2)ヒト好中球細胞株を用いた貪食アッセイ 3)好中球枯渇マウスと健常マウスへの感染実験における生存時間比較解析 これらの条件設定とデータ解析を行い、ペリプラズム領域GroELの量的変化を制御した変異株の好中球との相互作用の解析に備える。
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