研究課題
ロドコッカス・エクイの病原性プラスミド(pVAPN)保有株四日市の牛由来、長崎と沖縄の山羊由来、ヒトAIDS由来株の計13株について病原性プラスミドpVAPN脱落株(以下脱落株)を作製し、マウス病原性の比較検討した。脱落株を得るため、37℃継代培養を繰り返し行ったが、いずれの株でも脱落株を作製できなかった。そこで各株にエレクトロポレーションを行い、継代培養したところ、これら13株中6株で脱落株を得ることができた。ヒトAIDS由来10株中7株では未だ得られていないことから、なぜ脱落株を作製できないのかを調べるため、親株と脱落株3組、ヒトAIDS由来10株の37℃での増殖曲線を検討したところ、親株と脱落株で増殖に差のない株や37℃培養では増殖しにくい株が存在することが判明した。次に、四日市、長崎、沖縄、ヒトAIDS由来(JCM94-14,JCM94-19,JID03-27)の脱落株とその親株を用いてマウスあたり2×10の6乗の菌数を静脈内接種し、接種7日後の体内臓器中生菌数を比較した。その結果、脱落株において有意に菌数が低下することがわかった。また、ヒトAIDS由来株のうちマウスに対する病原性が低いとされ、かつVapN抗原を発現していない3株についてマウス病原性試験を行ったところ、JID03-46株では他の株の脱落株と同程度の病原性しか示さないことが明らかとなった。VapNに対する特異抗体を得ることを目的に大腸菌発現組換えVapN蛋白質を6匹のddYマウスに免疫した。先の実験で作出したpVAPN脱落株と親株に対するウエスタンブロットを行ったところ、保有株にのみVapNの抗原サイズと一致するバンドを確認することができた。以上の結果から、検出されたバンドはVapNであり、よってVapN特異免疫血清を得ることができたと考えられた。
2: おおむね順調に進展している
疫学調査については、沖縄県並びに長崎県の担当者と調査日を調整しているとことであるが、それ以外の牛・山羊並びにヒト由来株の病原性に関する研究は順調に進展している。
ロドコッカス・エクイの病原性プラスミドには、3つの大きなプラスミド型(pVANA, pVAPB, pVAPN)が存在している。本研究ではpVAPNに焦点を当て、その病原性発現機序を、pVAPAでの知見を基に比較研究を実施している。病原性プラスミド以外にも、病原性発現には染色体DNAの関与も考えられ、ゲノム解析の基礎データを得るため、ホールゲノムのシークエンスを計画している。
すべて 2018
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件)
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