研究課題
R.equiは子馬の化膿性肺炎の起因菌であるが、2015年に新たに牛の化膿性肉芽腫性病変分離株から第三の病原性プラスミドpVAPNが発見され、その後、わが国でも四日市の牛、また長崎と沖縄の山羊の病変部分離株よりpVAPN保有株が発見された。2019年度は、組み換えGST-VapNタンパク質を抗原として、山羊血清中の特異抗体を検出するELISAを確立し、2013年にヤギの本菌感染症が発生した農場で飼養されていた山羊の経過血清についてELISAとウエスタンブロットを行ったところ、2013年5月以降に採取された血清に抗体価が高い個体が見つかり、VapN陽性のバンドも検出された。一方、本菌感染陰性山羊のELISA抗体価は低く、ウエスタンブロットも陰性であった。これらの結果から山羊の病態識別値を設定し、2019年に同農場で採取した山羊血清でELISAを用いたスクリーニング検査を実施した。その結果42頭中12頭が陽性で、12頭中8頭がVapNの陽性バンドが検出された。2019年に同農場で採取した山羊糞便と土壌からの分離株のpVAPNが存在するかPCRにて調査した。糞便では42頭中30頭から本菌が分離され、1頭がpVAPN陽性であった。一方、土壌は20検体中13検体より本菌が分離され、1検体がpVAPN陽性だった。さらに陽性菌株を制限酵素処理しパルスフィールドゲル電気泳動を行ったところ、2013年に同農場で発症した山羊由来株の泳動像と今回の土壌分離株の泳動像が一致した。ELISAとウエスタンブロットの結果は約67%の割合で一致し、おおまかな相関関係が見られた。以上の成績から2013年以降に同農場にてpVAPN保有本菌が定着・蔓延していることが推察され、山羊の本菌感染症の全国的な疫学調査が望まれる。
2: おおむね順調に進展している
2013年に沖縄県の山羊の腫瘍臓器における化膿性肉芽腫性病変から分離されたロドコッカス・エクイの病原性についての検討が切っ掛けで、本研究が始まった。2015年当時は、これまで本菌で知られていた毒力関連抗原であるVapA, VapBの遺伝子を保有しないことから、無毒株と判定したが、その後の研究で、VapN毒力関連抗原をもつ線状プラスミドが病原性プラスミドであることが判明した。論文にも投稿中である。
VapNをコードする線状プラスミド保有ロドコッカス・エクイが牛、山羊などの反芻獣に化膿性肉芽腫性病変を引き起こす病原性細菌であることが明らかとなりつつある。わが国を含めその疫学研究は始まったばかりで有り、私たちが開発したELISAによる抗体測定系は、強力な疫学調査ツールとなった。さらに、国内の病原性プラスミド保有株が集まりつつ有り、これらの分子遺伝学的比較研究として、プラスミドの全塩基配列と Pathogenicity island(病原性遺伝子島)の解析が、20202年度の研究計画として進行中でる。
すべて 2019
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 3件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 4件)
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