研究課題
ウシの病変部から分離されたRhodococcus equiが新規毒力関連抗原VapNをコードする線状プラスミド(pVAPN)を保有することが明らかとなり、本研究ではその病原遺伝子と分子疫学調査を実施している。これまでの研究からvapN遺伝子を保有するヒト由来分離菌株間でVapNタンパク質産生量に違いがあることが明らかとなり、本年度はヒト由来株の中からVapN高産生株(JCM94-3株)と低産生株(JID03-27株)を対象とし、VapN発現における両菌株の染色体の影響を検討した。JCM94-3株とJID03-27株の全ゲノム配列を決定したところ、両染色体の塩基配列は98%以上が同一であることが明らかとなり、同時に複数の変異箇所を特定することが出来た。一方で、両菌株の保有するpVAPN塩基配列は99%以上が一致し、vapN pathogenicity island内においても6塩基の欠損と21塩基の置換が見られるのみで、プラスミド構造に大きな違いはなかった。ほぼ同一のpVAPNを保有していたことから、染色体上にVapNの発現制御因子が存在する可能性が考えられた。そこで、VapN発現量の違いを検討するため、両菌株のpVAPNを入れ替える目的で、培地内、培養細胞内及びマウス体内での共培養を実施し接合伝達を試みた。しかし、いずれの方法でも接合伝達株が分離することができず、接合伝達効率が非常に低いことが明らかとなった。pVAPN上に存在する接合伝達に関与する因子は、環状プラスミドとは異なることが報告されており、その接合伝達には既報とは異なる条件が必要となる可能性が考えられる。現時点ではVapN発現の相違が何に起因するのかは特定できなかったが、アンチセンス(AS)鎖の発現の可能性と、それによる両菌株の染色体上の変異箇所に存在する遺伝子との相互作用の可能性が推測され、検討を進めている。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2020
すべて 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 1件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 7件)
Vet. Parsitol.: Regional Studies and Reports
巻: 18 ページ: 1-6
10.1016/j.vprsr.2019.100327
J Wildl Dis.
巻: 56(2) ページ: 270-277
10.7589/2019-04-094.
Int J Parasitol Parasites Wildl.
巻: 11 ページ: 29-31
10.1016/j.ijppaw.2019.12.001
Food Microbiol.
巻: 92 ページ: 1-9
10.1016/j.fm.2020.103588
CIMID
巻: 73 ページ: 1-7
10.1016/j.cimid.2020.101540
Jpn. V J et. Med. Assoc.
巻: 73 ページ: 582-584
10.12935/jvma.73.582
Lett Appl Microbiol.
巻: 71 ページ: 679-683
10.1111/lam.13386.