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2019 年度 実績報告書

哺乳類特異的な社会適応性発達メカニズムの解明

研究課題

研究課題/領域番号 18H02356
研究機関麻布大学

研究代表者

茂木 一孝  麻布大学, 獣医学部, 教授 (50347308)

研究分担者 守口 徹  麻布大学, 生命・環境科学部, 教授 (10512006)
宮内 栄治  国立研究開発法人理化学研究所, 生命医科学研究センター, 研究員 (60634706)
研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2022-03-31
キーワード母子関係 / オキシトシン / 帯状回皮質 / 発達 / 社会行動 / 人工哺乳
研究実績の概要

本研究は哺乳類動物の“社会適応性”が母性因子によって発達するメカニズム解明を目指す。申請者はこれまで社会性に重要なオキシトシン(OT)神経系の幼少期機能に着目し、幼若マウスの帯状回皮質におけるOT受容体(OTR)数は成長したマウスより多く、この部位へのOT分泌は何らかの母性因子によって促進されること、OT阻害剤を徐放する薄いシートを幼若期に帯状回皮質にインプラントすると成長後に社会性が低下することなどを見出してきた。今年度からは、この幼少期OT神経系以外の新たな神経系の探索も開始した。これまでの研究から母性行動時に機能する神経細胞は、幼少期に母性因子から影響を受けている可能性が極めて高い。この標的細胞を探索するため、Targeted Recombination in Active Populations (TRAP)遺伝子改変マウスを用意した。このマウスでは4-OHTという薬物存在下でのみ、刺激によって活性化した細胞内で最初期遺伝子プロモーター下流のCreERが翻訳され、そのため蛍光タンパク質Tomatoが長期的に発現する。つまり仔マウスに4-OHTを投与した直後に母と再会させる、または筆による撫で刺激などを与えれば、その際に活性化した細胞にTomatoが長期発現する。そのマウスが成長後、自身の産んだ仔マウスに母性行動を示した後に脳をサンプリングし、二重免疫染色法によって母性行動発現によって活性化するマーカーのc-FosとTomatoの2つを共発現しているものが標的細胞だと考えられる。これまでの結果として、海馬歯状回、視床室傍核、視床下部弓状核において、幼少期に母から受けた刺激と自身が母性行動をしている際のどちらともで活性化する細胞が多数発現することを見出している。これらの細胞が幼少期の母からの刺激によって自身の母性行動発現を変化させることに関与することが考えられる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

社会行動における帯状回皮質の役割を調べるための成熟マウスの帯状回皮質活性をDREEDs-Gqで活性化させる実験は現在も継続して実施している状況である。また、新しくTRAP遺伝子改変マウスを用いたOT神経系以外の新たな神経系の探索も開始した。社会性発達に重要な母性因子の探索に関しては、まず幼若期の撫で刺激に着目しており、脊髄後根神経節の撫で感覚神経に特異的に発現するMrgprb4分子のプロモータ下流にCre遺伝子を挿入したMrgprb4-Creマウスを用い、幼若期にDREEDs-Giを導入して撫で感覚を幼若期特異的に抑制する実験は現在例数を追加中である。また、母性因子としては母乳にも着目している。OTは射乳を促す末梢作用をもつため、母の血中OT濃度は高いが、母乳中濃度はさらに高い。生体バリアが未発達な新生仔では母乳中OTが中枢まで達し、幼少期OT神経系に作用する可能性が充分考えられる。人工乳にOTを含有させてマウスを人工飼育する実験の最初のトライアルはすでに実施しており、研究計画は概ね予定通りに進んでいる。

今後の研究の推進方策

社会性発達に関わる神経系としては、帯状回皮質の役割を調べる実験を継続する。TRAP遺伝子改変マウスを用いた社会適応性に関わる新たな神経系の探索に関しては、4-OHTを投与する時期などを変える実験群なども作出しつつ、これまで見出した海馬歯状回、視床室傍核、視床下部弓状核の2重染色細胞はどのような神経伝達物質を有しているかなど、細胞の性質も明らかにしてゆく。母性因子の解析としては、撫で感覚刺激以外に母乳にも着目して母乳中にOTを含有させる実験を始めたところであるが、その実験を詰めつつ、母乳に含まれる細菌の役割を調べる実験も進める予定である。

  • 研究成果

    (13件)

すべて 2020 2019 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 1件)

  • [国際共同研究] New York University/School of Medicine(米国)

    • 国名
      米国
    • 外国機関名
      New York University/School of Medicine
  • [雑誌論文] The blockade of oxytocin receptors in the paraventricular thalamus reduces maternal crouching behavior over pups in lactating mice.2020

    • 著者名/発表者名
      A. Watarai, S. Tsutaki, K. Nishimori, T. Okuyama, K. Mogi, T. Kikusui
    • 雑誌名

      Neuroscience Letters

      巻: 720 ページ: 134761

    • DOI

      10.1016/j.neulet.2020.134761.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Gonadal steroid hormone secretion during the juvenile period depends on host-specific microbiota and contributes to the development of odor preference.2019

    • 著者名/発表者名
      I. Kamimura, A. Watarai, T. Takamura, A. Takeo, K. Miura, H. Morita, K. Mogi, T. Kikusui
    • 雑誌名

      Developmental Psychobiology

      巻: 61(5) ページ: 670-678

    • DOI

      10.1002/dev.21827.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Low maternal care enhances the skin barrier resistance of offspring in mice.2019

    • 著者名/発表者名
      T. Sakamoto, Y Ishio, Y Ishida, K. Mogi, T. Kikusui
    • 雑誌名

      PloS ONE

      巻: 14(7) ページ: e0219674

    • DOI

      10.1371/journal.pone.0219674.

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 早期離乳による行動発達変化への腸内細菌叢の関与2020

    • 著者名/発表者名
      茂木 一孝,上村 いつか,宮内 栄治,大野 博司,菊水 健史
    • 学会等名
      第93回日本薬理学会年会 シンポジウム「疾病・心理ストレスによる組織恒常性の破綻と修復における多臓器連関」
  • [学会発表] 前部帯状皮質は観察恐怖表出を制御する2020

    • 著者名/発表者名
      野元 謙作、中村 月香、村山 花子、永井 一成、都田 真由子、林 佳佑、 杉原 樹、茂木 一孝、小出 剛、菊水 健史
    • 学会等名
      第97回日本生理学会
  • [学会発表] オキシトシンによる情動性の涙2019

    • 著者名/発表者名
      菊水 健史、村田 香織、今田 敏博、Kai Jin 、茂木 一孝、永澤 美保、中村 滋 、坪田 一男
    • 学会等名
      NEURO2019 Symposium: 情動的価値を制御する神経ペプチドの新しい役割
  • [学会発表] Tbx1遺伝子ヘテロ欠損自閉症モデルマウスにおけるコミュニケーション能力の解析2019

    • 著者名/発表者名
      加藤 梨沙、町田 暁洋、野元 謙作、廣井 昇、茂木 一孝、菊水 健史
    • 学会等名
      NEURO2019
  • [学会発表] 腸内細菌叢の組成変化は早期離乳ストレスによるうつ様行動に関連する2019

    • 著者名/発表者名
      上村 いつか、宮内 栄治、土屋 範晃、田村 奏美、上杉 愛海、竹内 直志、茂木 一孝、大野 博司、菊水 健史
    • 学会等名
      NEURO2019
  • [学会発表] 前部帯状皮質は観察恐怖表出を制御する2019

    • 著者名/発表者名
      野元 謙作、中村 月香、村山 花子、永井 一成、都田 真由子、茂木 一孝、小出 剛、菊水 健史
    • 学会等名
      NEURO2019
  • [学会発表] 早期離乳が成長後の社会行動発現に及ぼす影響2019

    • 著者名/発表者名
      柳 佑実、久世 明香、茂木 一孝、菊水 健史
    • 学会等名
      第162回日本獣医学会学術集会
  • [学会発表] マウスにおける母性行動形質の次世代伝承2019

    • 著者名/発表者名
      二川 夏実、田村 奏美、神谷 麻愛、久世 明香、茂木 一孝、菊水 健史
    • 学会等名
      第162回日本獣医学会学術集会
  • [学会発表] Oxytocin neurons enable social transmission of maternal behavior.2019

    • 著者名/発表者名
      I. C. Carcea, N. Lopez, B. J. Marlin, R. Oyama, J. Mendoza-Navarpo, M. Opendak, A. L. Falkner, D. Lin, K. Nishimori, T. Kikusui, K. Mogi, R. M. Sullivan, R. C. Froemke
    • 学会等名
      NEUROSCIENCE 2019
    • 国際学会

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公開日: 2021-01-27  

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