研究課題/領域番号 |
18H02360
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
仙波 宏章 東京大学, 医学部附属病院, 登録研究員 (80747923)
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研究分担者 |
武田 憲彦 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (40422307)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 心不全 / 心肥大 / ReverseTAC / マクロファージ / 心臓線維化 / 心臓線維芽細胞 |
研究実績の概要 |
心肥大・心不全病態進展プロセスを理解するために、これまでマウス横行大動脈縮窄術(Transverse Aortic Constriction (TAC))モデルが広く用いられてきた。TACモデルは“心筋細胞肥大と心臓線維化”と言う心不全における主要な病態の理解に大きく貢献してきた。しかしながら心肥大・心不全病態発症プロセスを逆行させても心機能が回復する訳ではなく、心機能回復プロセスを検証する新たな病態モデル開発が切望されている。今回我々はTACモデル後に圧負荷を解除することにより発症した心不全を回復させる独自のモデル“ReverseTAC”を樹立した。本研究ではこのモデルを用いて、心肥大、心線維化を回復させる鍵となるプロセスを同定すると共に、心臓サイズ可塑性を阻害している病態機構の解明を目指す。 申請者はTACモデルを用いた解析から、低酸素領域に集積する炎症惹起型M1マクロファージが線維化を抑制することを明らかにしてきた。さらにReverse TACモデルでの解析を行ったところ、興味深い事に心機能回復期において炎症抑制型M2マクロファージが集積することが分かった。そしてマクロファージを除去するClodronate Liposomeを用いた検討から、心臓に集積するM2マクロファージは心臓線維化の消退に重要であることを確認している。本知見をさらに遺伝学的手法で検証するため、M2マクロファージの機能が低下したSTAT6欠損マウス、HIF-2α欠損マウス(Lysm-HIF-2α KO)を樹立し安定的な飼育に成功した。これらを用いてM2-Mφの線維化消退機構をin vivoにおいて検証していく計画である。さらにはM2マクロファージの発現解析(transcriptome)を行い、心臓線維化を消退させる候補因子群を同定する計画である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請者らはこれまで組織リモデリング、線維化においてマクロファージを介する炎症 プロセスが重要な役割を果たすことを明らかにしてきた。近年、組織マクロファージには炎症惹起型のM1と炎症抑制型のM2といった亜集団があることが知られている。申請者らは、低酸素誘導型転写因子HIF-1αを介する低酸素シグナルがM1真マクロファージ活性化において必須であることを同定してきた。更にTACモデルを用いて、M1マクロファージが心臓低酸素領域に集積し、Oncostatin-Mの分泌を介して心臓線維化進展を抑制することを見出した。申請者らはこれらの研究背景をもとに本研究計画を立案し、TAC後に上行大動脈縮窄部を解除することにより心機能を回復させる病態モデル(Reverse TAC)を独自に樹立した。Reverse TACモデルでの解析を行ったところ、興味深い事に心機能回復期において炎症抑制型M2マクロファージが集積することが明らかになった。さらにマクロファージを除去するClodronate Liposomeを用いた検討から、心臓に集積するM2マクロファージは心臓線維化の消退に重要であることが確認された。本知見を遺伝学的手法で検証するため、M2マクロファージの機能が低下したSTAT6欠損マウス、HIF-2α欠損マウス(Lysm-HIF-2α KO)を樹立し安定的な飼育に成功した。これらを用いてM2マクロファージの線維化消退機構をin vivoにおいて検証していく計画である。さらにはM2マクロファージの発現解析(transcriptome)を行い、データ取得に成功した。この網羅的データを解析し、心臓線維化を消退させる候補因子群を同定する計画である。以上より、研究はおおむね順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
今後まずは、樹立したM2マクロファージの機能が低下したSTAT6欠損マウス、HIF-2α欠損マウス(Lysm-HIF-2α KO)を用いて、M2マクロファージの線維化消退機構をin vivoにおいて検証していく計画である。さらにはM2マクロファージのtranscriptomeデータを解析し、心臓線維化を消退させる候補因子群を同定していく。 また大変興味深い事に、申請者らは本研究で樹立したReverse TACモデルの解析によって、活性化した線維芽細胞は一旦不活化しても容易に再活性化する(活性化閾値の低下)ことも見出している。このような潜在的な線維芽細胞活性化は心機能回復の大きな障害であると考えられる。活性化閾値低下のメカニズムを解明するため、線維芽細胞活性化を担うsmooth muscle α actinおよびcollagen1a1遺伝子近傍のエピジェネティック修飾様式に着目した解析を行っていく。 さらに申請者は、Reverse TACモデルを用いた解析から、心肥大回復過程ではプロテアソーム系を介する心筋細胞サイズ縮小が必須であり、時間経過と共に心機能の回復が困難になって心筋細胞の肥大も残存したままとなることを見出した。プロテアソーム系は心筋細胞サイズ調節において重要な役割を果たしていると考えられるが、その活性は細胞内ATPレベルにより制御されているため、本研究では特に心筋細胞のATP産生機構に着目し、ATPレポーターマウス(GO-Ateam)および生化学的解析によりミトコンドリア活性の解析を行う予定である。
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