研究課題
本国では、2014年には年間39万件の不妊治療 (ART) が実施されその数は世界一であり、ARTにより誕生した子供は4万7000人、21人に一人の割合となった。その技術発達は目覚ましいものの、優良な受精胚を母体に戻しても出産成功率は未だ30%に留まる。その原因の多くは未だ不明であるが、母体の高年齢化、心身のストレスなどが与える影響が大きいと考える。そこで、着床不全の母体側要因を明らかにするため、我々のオリジナルマウス( Sox17ヘテロ個体)を用いて着床不全に関する下位遺伝子を探索し、治療に反映可能な因子の同定を試みる。最終的には着床不全因子の母体要因・年齢についてIn vivo 解析を行うことを目的として本申請を実施した。本年度はSox17下位置着床関連因子のトランスクリプトーム解析の実施から、そのうち候補遺伝子でありEGF-Rcのリガンドの1つであるAregに関して絞り込むことに成功し、q-PCR, 組織科学的手法にて局在の確認を行うと共に、受精胚移植の際に添付可能な因子を治療効果評価についての実験を実施した。また関連遺伝子に関しての発現解析と治療効果の可能性も検討中である。
2: おおむね順調に進展している
DNA array (アフィメトリック社の Mouse Expression Set 430 上でハイブリダイズ) 実験をリピートしGO解析の精度を上げた。DOP1と比較して、発現量に2倍以上の変化が認められた遺伝子に対し、Sox17ヘテロ個体でその発現が1/2以下である遺伝子群をSox17遺伝子の具体的な下位候補として同定し、EGF Rc関連遺伝子であるAregとHB-EGFに関して、妊娠経時的 (DOP1-4) にサンプリングしたwild type横断切片を用いて、組織化学を実施し、Sox17とoverlapし、類似した発現パターンを示す遺伝子を標的遺伝子候補として確認した。またその RNA発現をqPCRを用いて半定量的に検討し、Aregのヘテロ個体における発現の著しい低下を確認した。Sox17遺伝子は転写因子であるが、特に胚移植時に応用可能と思われ、下位に存在する液性因子や細胞外基質などの例としてAregは有用であると思われた。更に、、受精胚の移植の際にAREGを導入することでその効果を確認し、着床率への関与を生体レベルの反応性を観察中である。
ヘテロ個体への胚移植の着床率改善に関して、再度実験を試みると共に着床不全に関する新しいIn vivoの実験系を開発する。
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Biol. Reprod
巻: 99(3) ページ: 578-589
10.1093/biolre/ioy079.
http://www.tmd-cea.jp/eam/