研究課題
近年のART技術の発達はめざましい一方、優良な受精胚を母体に移植しても、出産成功率は30-40%に留まる。その原因の多くは未解明であるが、母体環境として受容期が非常に短いということが大きな障害となっている。また着床メカニズムと関与する分子機構は未だ不明な点が多い。そこで本研究では、我々のオリジナルマウスであるSox17ヘテロ個体(着床不全モデルマウス)を用いて、Sox17遺伝子の下位因子を同定し、着床不全に関して治療応用を模索する。着床不全に関する母体要因、年齢の相関関係などに着目し、子宮内膜細胞を特異的に置換する系の開発などin vivo解析を実施することで、妊娠率の向上を目指す。Sox17は mRNAレベルでは、野生型マウスで妊娠3日目に上昇を始め4日目で最も高値を示した。一方ヘテロ変異体では、4日目に野生型の2/3であったのに対し、5日目では野生型と同様のパターン、Sox7に関してはSox17と相反する発現が観察された。Sox17の発現が上昇する前着床受容期(妊娠3日目と4日目)の子宮内膜上皮における遺伝子発現変化について、DNAマイクロアレイ法、並びにシングルセル解析にて、下位の候補遺伝子の検索を行った。正常妊娠1日目と比較して、前着床受容期で発現が2倍以上に上昇した遺伝子群、並びに、野生型と比較してSox17ヘテロ変異雌マウスで前着床受容期に1/2に発現減少した遺伝子の比較から、Sox17と発現パターンの近い遺伝子を絞り込み、そのうち細胞外領域関連因子について、Amphiregulin (heparin-binding EGFR ligand) に候補遺伝子を絞り、関連遺伝子と受容体について検討した。着床期における発現バターンが、Sox17遺伝子と同調していること、組織科学的にヘテロ個体で消失し、胚着床に関連する可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
子宮内膜上皮の機能回復実験として、Soa17flox/floxマウスもしくはROSA-ジフテリア毒素受容体(DT) Floxマウス、特異的Creマウスとしては、Lactfferin-Receptor(Ltr;子宮内膜上皮特異的)と、Progestsrone-Receptor(PR;子宮内膜上皮、間質細胞、平滑筋層)のかけ合わせを実施した。CAG-GFP個体から単離した子宮内膜上皮細胞を移植することで細胞種特異的置換方法を確立した。
実験4)ホルモン応答性・着床率の検討Sox17遺伝子は、マウス子宮内においてプロゲステロンレセプターのターゲット遺伝子であることが報告されている。そこで、個体レベルでのホルモン応答性について、正常マウスの非妊娠期・妊娠期のSox17ヘテロ個体の血中ホルモンを定量し、その関連性を観察する。母体年齢の差異についても検討を加える。実験5)子宮内膜上皮細胞のheterogenity解析Sox17-GFP KIマウスの蛍光観察では、子宮内膜上皮、卵管上皮の一層における遺伝子発現が確認されたが、細胞レベルでの明らかな発現のばらつきが認められた。Sox17の発現制御が胚の着床は母体への侵入プロセスを制御しているという仮説を実証する。実際には、我々はすでに子宮内膜上皮一層を単離する方法を確立している(Hirate et al Sci Rep 2016)。そこで子宮内膜上皮単離した後に,Tropsin-EDTA. Pancretinの酵素処理を行い単細胞化する。得られた細胞にたいして、ナノウェルを用いたシングルセル解析(ICELL8)を実施する。 Sox17発現の有無と細胞分化レベルの関連性について明らかにする。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件) 備考 (1件)
Disease Models & Mechanisms
巻: 13 ページ: 1-10
0.1242/dmm.042119 Published 29 January 2020
http://www.tmd-cea.jp/eam/