研究課題/領域番号 |
18H02363
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研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
依馬 正次 滋賀医科大学, 動物生命科学研究センター, 教授 (60359578)
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研究分担者 |
水野 聖哉 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (10633141)
杉山 文博 筑波大学, 医学医療系, 教授 (90226481)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 血管新生 |
研究実績の概要 |
これまでにマウス発生期の血管内皮細胞に高度に発現する遺伝子を網羅的に探索する過程で、Exoc3L1, 3L2, 3L3, 3L4から成るExoc3L (Exocyst Complex Component 3-Like Protein)遺伝子ファミリーを同定していた。H30年度は、Exoc3L1、Exoc3L2、Exoc3L3、Exoc3L4 遺伝子座に蛍光レポーターをノックインしたマウスを作製し、表現型を解析したところ、Exoc3L2とExoc3L4 KOマウスは胚生致死、Exoc3L1、Exoc3L3 KOマウスは生まれて、生殖能力があることが分かった。Exoc3L2-GFPノックインマウスは、胎齢8日頃からGFPを血管内皮細胞において特異的に発現すること、KOマウスは胎生15日前後に出血により致死となることが分かった。Exoc3L4 GFPノックインマウスはGFPを主として血管内皮細胞および心筋において高発現し、KOマウスは胎生12~15日前後で致死となることが判明したものの、死因は不明である。Exoc3L1、Exoc3L3 KOマウスは、1年近く観察しているが生存率に差はなく、またKO胚の血管構造に目立った表現型は観察されていない。 Exoc3L 群とExocyst complex(ヘテロ8量体タンパク複合体)を形成する共通コンポーネントとされるExoc1 の血管内皮細胞における機能的貢献を調べる目的で、Exoc1 floxedマウスと血管内皮細胞特異的にCreを発現するマウスを交配し、血管特異的ノックアウトマウスを作製したところ、Exoc3L遺伝子の単独KOマウス胚よりも重篤な表現型を示し、胎生10日前後と非常に早期に致死となることが分かり、血管内皮細胞において重要な機能を有している事が示唆された。 血管可視化マウスとしてVEGFR3受容体遺伝子のゲノム領域を有するBACクローンにVenusをノックインしたBAC DNAをマウス受精卵に導入し、VEGFR3受容体遺伝子の発現を再現するBACトランスジェニックマウスを作製した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
遺伝子改変マウスの作製は順調に進んでいたが、有望なラインが複数有ったため、選定にやや遅れがあった。そのためRNA-seq解析を行うタイミングがやや遅れた。 一方、Exoc3L遺伝子KOマウスの作製は非常に順調であり、その中でもExoc3L2、Exoc3L4 KOマウスが心血管系の表現型を示した点は評価している。今後、多重KOマウスを作製することで、より重篤な血管発生異常が見られる可能性もあると期待している。Exoc3Lファミリーは進化上脊椎動物になって現れた遺伝子群であるが、個体レベルでの生理的役割や進化上の意義は全く分かっていない。この方向で研究を推進することで、脊椎動物になって管腔状の血管という臓器を獲得した遺伝子レベルでのメカニズムが分かるかもしれないと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
研究実績の概要で述べたように、Exoc3L2-GFPノックインマウスはGFPを血管内皮細胞において強く発現すること、KOマウスは胎生15日前後に出血により致死となることが分かったため、出血のメカニズムを明らかにする。具体的には、血管内皮細胞の周囲に血管平滑筋細胞が被覆することで血管壁を補強するが、その被覆が起こらない可能性を検討する。もう一つの可能性として、血管内皮細胞間の接着が弱まることで出血に至る可能性もあるため、接着分子の発現を中心に検討する。また、Exoc3L4 GFPノックインマウスはGFPを主として血管内皮細胞および心筋において高発現し、KOマウスは胎生12~15日前後で致死となることが判明したものの、死因は不明であるため、今後は血管内皮細胞特異的KOを作製し、血管内皮細胞におけるExoc3L4の機能が重要かどうか明らかにすることで、メカニズムに迫る。
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