研究課題/領域番号 |
18H02364
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
横井 伯英 京都大学, 農学研究科, 教授 (70311610)
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研究分担者 |
波多野 直哉 神戸大学, 医学研究科, 医学研究員 (10332280)
須山 幹太 九州大学, 生体防御医学研究所, 教授 (70452365)
谷口 幸雄 京都大学, 農学研究科, 准教授 (10252496)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 糖尿病 / 疾患モデル / 遺伝素因 / 病態発症機構 / オミクス |
研究実績の概要 |
本研究は、研究代表者らが新規に確立した肥満・糖尿病モデルZucker fatty diabetes mellitus(ZFDM)ラットを対象として、遺伝素因と病態発症・進展機構を明らかにすることを目的とする。2019年度は以下の研究を行った。 1) ZFDMラットとZFラットの交配実験:肥満・糖尿病モデルZFDM系統と肥満モデルZF系統との間でF2仔を145匹作出したが、60週齢までに糖尿病を発症した個体は1匹のみであった。そこで、ZFDM系統とZF系統との交配により作出したF1仔にZFDM系統を戻し交配し、N2仔を作出することとした。N2仔のうちオスfa/fa個体について60週齢まで糖尿病発症について観察中であるが、これまでに数十%の個体に糖尿病の発症が認められた。 2) 膵島のmRNAシーケンス解析とメタボローム解析による代謝障害の経時的変化の解明:これまでに同定しているZFDMラットと対照のZFラットの膵島において遺伝子発現プロファイルが異なる遺伝子についてTaqmanプローブおよび膵臓切片の蛍光免疫染色による検証を実施した。膵β細胞の分化マーカーの発現低下と増殖マーカーの発現上昇が確認された。 3) 膵島プロテオーム解析による異常修飾タンパク質の同定:ZFDMラットと対照のZFラットから約1,000個の膵島を単離し、抗O-GlcNAc抗体を用いた免疫沈降によりO-GlcNAc修飾タンパク質を抽出し、イオントラップ型-飛行時間型の液体クロマトグラフ質量分析計(LCMS-IT-TOF)を用いたプロテオーム解析によりタンパク質を同定した。現在、両系統間でO-GlcNAc修飾の相違が認められた複数のタンパク質について、膵β細胞株を用いて機能的役割を検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ほぼ計画通りに進行しているため。
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今後の研究の推進方策 |
1) 糖尿病遺伝素因の解明:新たに作出したN2仔について60週齢まで糖尿病関連の表現型データを取得するとともに脾臓から抽出したゲノムDNAを用いてSNPタイピングにより全ゲノムに散在する3万個のSNPについての遺伝子型を取得し、表現型データとともにカイ自乗検定や量的形質遺伝子座(QTL)解析により糖尿病発症に関与するゲノム領域および疾患候補遺伝子を同定する。さらに、ZFDMラットとZFラットのエクソーム解析により疾患候補遺伝子におけるZFDMラットに特有の変異を同定する。 2) 膵島代謝障害の経時的変化の解明:ZFDMラットとZFラットの膵島を用いたメタボローム解析により代謝プロファイルの経時的変化を明らかにするとともに病態発症・進展に関与する代謝物・代謝経路を特定する。さらに、病態発症・進展へ関与が疑われる候補遺伝子や代謝物・代謝経路について、膵β細胞株を用いてsiRNAによるノックダウン、CRISPR/Cas9システムによるノックアウト、活性化剤・阻害剤などによりインスリン分泌や細胞増殖・維持における機能的役割を検討する。 3) 膵島プロテオーム解析による異常修飾タンパク質の同定:ZFDMラットと対照のZFラットの間でO-GlcNAc修飾の相違が認められた複数のタンパク質について、膵β細胞株を用いて機能的役割を検討する。さらに、膵β細胞株を用いてO-GlcNAc修飾とPKAによるリン酸化の競合が生じるタンパク質の同定を試みる。
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