現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①精子クロマチン特異的切断H3の生化学的特性の解明:我々はH30年度に質量分析を用いて精子特異的H3切断部位を同定し、さらに切断型H3で好発する修飾を同定した。しかしながらその結果、この修飾が抗体作製に支障となることが判明し、切断型H3特異抗体の作製を断念した。代替策として生化学的に精子切断型H3を単離した。この切断型H3は免疫沈降実験でH4, H2A, TH2Bが共沈したことから、切断型H3も通常の八量体ヌクレオソーム構造をとっていると推察された。さらにChIP-seq解析によってそのゲノム局在の同定に成功した。しかしH3はバリアントによってゲノム局在が大きく異なることから、得られた結果がどのバリアントに由来する切断型H3かを確認する必要があると考えられた。さらに、精巣内生殖細胞には精子クロマチン特異的切断H3の他にもう1種類の切断型H3が存在することを予備的知見として得ていることから、精巣では生殖細胞の分化段階に応じて異なる切断型ヒストンが産生される可能性が示唆され、今後はこれらを、精子の分化段階に応じて個別に検討する必要があると考えられた。 ②精子由来切断H3の経世代影響の解明:ES細胞におけるヒストンH3切断を担うカテプシンL阻害剤を精巣組織培養に適用し、H3の切断が阻害されるか否かを検討した。その結果、カテプシンL阻害剤によって精子型ではない切断型H3の産生が阻害されることを見出した。しかし精巣組織培養が可能な期間が短いことから、精子型切断H3に対する効果の検討には至らなかった。一方でChIP-seqデータの再解析等から、H3に起こる主なヒストン修飾の中で、経世代効果にはH3K27me3が最も大きなインパクトを有することを見出した。
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