研究課題/領域番号 |
18H02372
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
西山 朋子 名古屋大学, 理学研究科, 准教授 (90615535)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | クロマチン / 姉妹染色分体間接着 |
研究実績の概要 |
本研究では、姉妹染色分体間接着のマシナリーがその機能を適切に遂行するために、局所的にクロマチン構造を変化させる機構を明らかにすることを目指す。特に、染色体均等分配における重要性が最も高い染色体領域のひとつであるセントロメア近傍ヘテロクロマチン領域は、姉妹染色分体間接着活性が濃縮された領域として知られているが、ヌクレオソーム密度の高いヘテロクロマチン領域において接着がどのように確立されているのか、その実体は不明である。本研究ではヘテロクロマチン領域に着目し、初年度はショウジョウバエS2細胞を用いて、ヘテロクロマチンに局在する接着確立因子 Dalmatian(Dmt)の結合因子から接着必須因子の同定を行った。 DmtのC末端側にEGFPを融合させたDmt-EGFP発現ベクターをショウジョウバエS2細胞に導入し、Dmt-EGFP恒常発現細胞を作製した。このDmt-EGFP発現細胞において、Dmt-GFPは内在性と同様の挙動を示すことを確認した。EGFPに結合する性質をもつGFP nanobodyを用いてDmt-EGFP恒常発現細胞からDmt-EGFPをプルダウンし、結合タンパク質を質量分析によって網羅的に同定した。プルダウン実験のネガティブコントロールにはEGFP発現細胞を用いた。Dmtに有意に結合する因子すべてについて、dsRNAをin vitro合成したのち、S2細胞においてノックダウンを行い、分裂期染色体の接着が失われる、あるいは減弱する因子を同定した。現時点でスクリーニングは9割程度完了しており、すでにValidation screeningを終えた因子の中には、DNA結合因子、RNA結合因子、ヒストン修飾因子など、興味深い因子がいくつか同定されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していたスクリーニングを初年度のうちに概ね完了させることができた。数遺伝子のValidation screeningを残すのみとなっている。またスクリーニングの結果、興味深いいくつかの因子も同定されており、機能解析のステップに進むことができると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後はひきつづきValidation screeningを完了させるとともに、初年度で同定した接着に必須の、あるいは接着機能に重要と思われるDmt結合因子の働きを明らかにしていく予定である。特にヘテロクロマチンにおける局在や機能に着目し、接着機能との関連を明らかにする。現在同定されているほとんどの因子が、従来の動物細胞を用いた細胞生物学研究で、接着機能との関与が示唆されたことのない新規遺伝子である。このことから、まず、これらの因子の細胞内局在や、染色体上での安定性など、基本的な情報をあきらかにすることからはじめる。さらにDmtと結合することによって、どのように接着機能を制御しているのか、またヘテロクロマチン構造形成にどのような役割を果たしているのかを明らかにしていく。
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