研究課題/領域番号 |
18H02380
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
吉川 学 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 生物機能利用研究部門, 上級研究員 (80391564)
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研究分担者 |
西野 達哉 東京理科大学, 基礎工学部生物工学科, 准教授 (50533155)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | miRNA / siRNA / Argonaute |
研究実績の概要 |
RNA依存性RNAポリメラーゼ(RDR)によって二本鎖RNAに変換され、その二本鎖RNAをDicer(植物ではDICER-LIKE(DCL))が切断し、新らたにsiRNA(二次的siRNAと呼ばれる)を生成するRNAサイレンシング増幅機構がある。植物における二次的siRNA生成経路では、AGO1やSGS3、SDE5、RDR6、DCL4などのタンパク質が重要な役割を果たしていることがわかっている。本研究では、植物の細胞抽出液を用いて試験管内で二次的siRNAを生成する実験系を使ってSGS3やSDE5の機能を明らかにし、植物の二次的siRNA生成の分子機構を明らかにすることを目的に行っている。 本年度は構築した二次的siRNA生成再構成系を用いて、二次的siRNAが標的からどのように生じているかをsmall RNA sequencingにより解析した。その結果、標的の3'側からsiRNAが生じており、SDE5の添加によって著しく生成量が亢進することがわかった。また、λファージのNタンパク質に由来する22アミノ酸(λN)を融合したSDE5またはSGS3を試験管内翻訳系によって調製し、λNと特異的に結合するboxB構造を持つRNAを用いて、RDR6の呼び込み反応を解析した。その結果、SDE5とSGS3両方が協調してRDR6を呼び込み、二本鎖RNAを合成するすることがわかった。また、λN-boxBの代わりにAGO1を用いた場合でも、SDE5とSGS3が協調してRDR6を呼び込むことがわかった。 二次的siRNA生成の構造的基盤を明らかにするため、昨年に引き続きSDE5のC末端側の構造ドメインを中心に進めているが、構造決定には至っていない。一方、SGS3タンパク質配列中の二次構造や天然変性領域を予測した結果、N末端の約200残基は天然変性領域で、二次構造をとっていないことがわかった。対してC末端の約400残基中にはDNAやRNA結合、タンパク質相互作用に関わる領域が存在した。N末端を欠失したSGS3コンストラクトを作成したところ、組換えタンパク質を大量に発現することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に記載した研究を概ね完了し、相応の研究結果が得られたため。
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今後の研究の推進方策 |
本年度はSDE5とSGS3により呼び込まれるRDR6がpolyA鎖を持つRNAが二本鎖RNA合成の鋳型となる因子を探索する。そこでまず22塩基小分子RNAを含むAGO1を候補因子とし、AGO1存在下でSDE5とSGS3によるRDR6がpolyA鎖RNAに呼び込まれるかどうか調べる。もし、RDR6によるpolyA鎖からの二本鎖RNA合成が見られた場合は、二本鎖RNA合成の開始箇所を網羅的に解析するために次世代シークエンサーを行い、得られたデータについて解析を行う。 また、本年度が最終年度であるためこの2年間で行って来た研究結果について、論文の作成及び投稿を予定している。 昨年度に引き続きSDE5C末端ドメインの構造解析を行う。これまでに大腸菌を使った組み換えタンパク質として発現精製に成功し、結晶化をお こなっている。今年度は引き続き結晶化を行い、立体構造決定を目指すとともに試験管内系によりRNA結合能を解析する。またRobettaによる構造予測を行った結果、この構造モデルを得ることができている。得られたモデルをもとに変異体を作成し、生化学的解析を行う。一方、SGS3にはDNAやRNA結合に関与するZf-XSやXSドメインが存在するが、立体構造は不明である。そこでSGS3の組換えタンパク質発現コンストラクトを作成し、生化学的解析、立体構造解析を行う。構造が得られた場合は変異体を作成し、試験管内系を使った機能解析を行う。
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