非コードRNAが司る遺伝子制御は原核生物から真核生物に至るまで広く保存された分子機構である。これらの分子機構では非コードRNAがガイドRNAとしてはたらき、RNA依存性ヌクレアーゼを標的となる核酸に導くという共通原理が存在する。しかし、その分子機構はきわめて多様であり、不明な点が多く残されている。 本年度は、ショウジョウバエ由来Piwiタンパク質に関して結晶構造解析を推進した。Piwiを特異的に認識するモノクローナル抗体をCNBr活性化セファロース樹脂に固定化した抗体カラムを作製し、ショウジョウバエ卵巣由来培養細胞から内在性のPiwi-piRNA複合体を回収した。Piwi-piRNA複合体の結合したセファロース樹脂をプロテアーゼで処理することにより、Piwi-piRNA複合体を抗体樹脂から単離することに成功した。さらに、イオン交換カラムとゲルろ過カラムを用いてPiwi-piRNA複合体を高純度に精製した。精製試料を用いて結晶化スクリーニングを行い、結晶を得て、大型放射光施設SPring-8においてX線回折データを収集した。既知Argonauteの構造を用いた分子置換法により位相決定を行い、電子密度マップを得た。また、Piwiの構造解析に加え、ゲノム編集に利用されているS. pyogenes由来Cas9(SpCas9)に7つのアミノ酸変異を導入することにより、野生型SpCas9と異なり、NGGではなくNGという配列(1塩基のグアニン)をPAMとして認識するCas9改変体(SpCas9-NG)を作製し、ゲノム編集の適用範囲を拡張することに成功した。
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