研究課題
本研究では、研究代表者が開発したSCPタグ(ペプチド系溶解性制御タグ)を用いて、抗原タンパク質の会合が、その免疫原性に与える影響とその分子機構を物理化学的な視点から系統的に解析することを目的とした。SCPタグは、対象タンパク質の末端に付加することで、溶媒条件を変えずにタンパク質の溶解性のみを制御するための3~5残基の短い配列である。SCPタグの免疫原性への効果が普遍的であることを示すため、研究代表者がタンパク質の折り畳み研究で用いた牛膵臓トリプシン阻害タンパク質(以下BPTI;分子量=6.5kDa)と、アジアの広い地域で公衆衛生上の問題となっているデング熱の病原体であるデングウイルス由来の糖エンベロープタンパク質第3ドメイン (以下ED3;分子量=12kDa)を用いた。初年度は、SCPタグをBPTI及びED3タンパク質の末端に付加することで会合度を制御し、会合度の温度、濃度及びSCPタグ配列種の依存性を検証した。2年目には、5個のIle から成るSCPタグを付加して会合させたBPTI及びED3の免疫原性が飛躍的に向上することを示した。令和2年度は、Ileから成るSCPタグによる免疫原性向上の効果とメカニズムをELISA法とFACS法を用い詳しく調べた(一部実験はコロナ禍のため令和3年に延期した)。その結果、5個のIleからなるSCPタグを付加すると免疫増強剤(アジュバント)なしでも野生型ED3より免疫原性が200倍以上向上することが明らかとなった。令和3年度には、本技術をコロナウイルス由来のスパイクタンパク質の一部であるRBDドメイン(受容体結合ドメイン; 198残基)に応用した。その結果、RBDを大腸菌で天然構造を有する状態で発現することに成功した。さらに、RBDを抗原に用いて誘導させた免疫応答をELISA法及びFACS法を用いて解析し、RBDが誘導する免疫応答が長期に渡ること(長期免疫記憶)を示唆し、抗コロナワクチンへの応用の可能性を示した。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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