研究実績の概要 |
近年のメタゲノム解析によって多くの生物がレチナールを発色団とする光受容膜タンパク質ロドプシンを有することが明らかになり、その機能は多様化している。特に光駆動型ナトリウムイオンポンプ型や硫酸イオン輸送型ロドプシンなどのユニークなタイプが発見され、その機能発現においてイオンの役割が注目されている。本研究では従来、構造生物化学の分野で使用されてきた水素1H、炭素13Cや窒素15Nの観測核に加えて 、観測核としてナトリウム23Naや硫黄33Sを組み合わせた新しい固体NMR測定法の開発とイオン輸送型ロドプシンへの適用を行う。具体的にはイオンの直接的なプローブとして23Naまたは33Sの観測核を用い、ナトリウムイオン(23Na+), 硫酸イオン(33SO42-)やリン酸イオン(PO43-)の信号を1H, 13C, 15N NMR信号と相関させることでタンパク質に結びつける。本年度は、光照射固体NMRによるセンサリーロドプシンII中のレチナールの13C NMR信号変化からフォトサイクルを形成する光中間体のM中間体とO中間体の観測に成功するとともに、吸収スペクトルでは十分に区別できなかったN'中間体の観測に成功した(米国生物物理学会誌Biophys. J.表紙に採択)。さらに本年度は多次元固体NMRによるイオン輸送型ロドプシンの構造解析を推進し、結合するイオン種に対応したタンパク質のNMR信号変化を観測した(生物物理学会年会, NMR討論会で発表)。また、結合イオンの直接観測のために、23Na, 33S, 39K観測のための二重共鳴プローブを整備し、標準試料の測定が可能となっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
光照射固体NMRによるセンサリーロドプシンII中のレチナールの13C NMR信号変化からフォトサイクルを形成する光中間体のM中間体とO中間体の観測に成功するとともに、吸収スペクトルでは十分に区別できなかったN'中間体の観測に成功した(米国生物物理学会誌Biophys. J.表紙に採択)。さらに本年度は多次元固体NMRによるイオン輸送型ロドプシンの構造解析を推進し、結合するイオン種に対応したタンパク質のNMR信号変化を観測した。また、年度計画の一つである内容として、結合イオンの直接観測のために、23Na, 33S, 39K観測のための二重共鳴プローブを整備し、標準試料の測定が可能となっている。
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