研究課題
基盤研究(B)
本研究では,基底膜の主要な構成分子であるラミニンとその受容体であるインテグリンの複合体の3次元構造を決定し,その分子認識機構を解明することを目指した.独自に開発した小型抗体をツールとして使うことで安定な複合体試料の調製に成功し,クライオ電子顕微鏡を用いた単粒子解析により,3.9Å分解能でその構造を決定した.さらに,複合体構造から明らかになった結合インターフェースのアミノ酸残基について,変異体を用いた結合親和性解析を行うことで,各アミノ酸残基の結合への寄与を定量的に明らかにした.
構造生物学
インテグリンとラミニンの結合は細胞接着の足場として働くだけでなく,細胞の増殖や分化,生存などをコントロールしており,癌細胞においては浸潤や転移にも関与している.また,ES細胞やiPS細胞といった多能性幹細胞ではインテグリンが高発現しており,これらを培養する際には,ラミニンが接着培養の土台(培養基質)として実際に応用されている.本研究で詳細に明らかにしたインテグリンとラミニンの相互作用機構は,単なる生命現象の理解にとどまらず,創薬や再生医療にも大きく貢献するものである.