研究課題/領域番号 |
18H02390
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
栗栖 源嗣 大阪大学, 蛋白質研究所, 教授 (90294131)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 構造生物学 / 分子モーター / ダイニン / 微小管 |
研究実績の概要 |
ダイニンは,鞭毛・繊毛運動を駆動し,染色体分離や細胞内輸送を担う非常に重要な生体分子であるにも関わらず,モータードメインの分子サイズが380 kDaと巨大であるため,最近まで原子レベルの構造解明が遅れていた。ダイニンは複数のタンパク質から構成される複合体であり,小胞などの荷物を運ぶ際には,BICD2を介してダイナクチンと生体超複合体を形成して機能することが判っている。微小管に結合したダイニンは遊離状態に比べてATPase活性が著しく上昇するため,微小管上結合により活性化されたダイニンの構造情報はダイニンの運動機能を理解するうえで必須の構造情報であると言える.本研究の目的は,ダイニン・ダイナクチン複合体の微小管結合領域に着目し,微小管を構成するαβチューブリンダイマーとの複合体結晶構造を解析するとこにより,微小管結合によりダイニンが活性化される仕組みを明らかにすることである。本年度は,まずαβチューブリンダイマーと重合阻害蛋白質DARPinとの共結晶化を行い構造解析を行った。これまでのCryo-EMによる研究からダイナクチンCAP-Gly領域が結合すると考えられる領域の高分解能での構造記述が可能となった。次に,軸糸ダイニン外腕γ重鎖の微小管結合部位(MTBD)に結合することが明らかにされた軸糸ダイニン軽鎖(LC1)の構造解析を行った。LC1が結合することにより、ダイニン重鎖の微小管への結合能が変化することが明らかにされている。このことから、LC1がダイニンのモーター活性を間接的に制御するメカニズムを考察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ダイニンのストークMTBD領域,ダイナクチンp150Gluedの微小管結合能を有するCAP-Glyドメインを対象に,各タンパク質とαβチューブリンダイマーとの複合体結晶を作成することを目指している。無事,αβチューブリンダイマーの複合体結晶を得ることができたので,次にダイニンストークのMTBD領域,ダイナクチンp150GluedのCAP-Glyドメインとの複合体結晶化を目指した。現在までのところ,複合体結晶は得られていないが,ダイニンの種類を細胞質ダイニンに限らず,種類の多い軸糸ダイニンにまで広げることで結晶化の可能性をあげる努力をしている。概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
クラミドモナス由来の軸糸ダイニン軽鎖1(LC1)が外腕ダイニンγ重鎖(OADγ)の微小管結合部位(MTBD)に結合することが最近になって示され、軽鎖がMTBDと直接相互作用しうることが初めて報告された。今後は,ダイニンストークのMTBDとしてはOADγ-MTBDとLC1を中心に構造解析を検討していく。更に,ダイナクチンp150についてはCAP-Glyドメインに限らず,そのほかの領域CC1やCC2についても構造情報が欠落しているので,CC1やCC2領域についても構造情報を得るべく実験を進めていく予定である。
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