研究課題
2019年度は、(1)Hefのヘリカーゼドメインと天然変性領域のインテインによる連結の検討と(2)粗視化MDによるX線溶液散乱データの解析を実施した。さらに、(3)重水素化のための大腸菌培養プロトコールの検討も行った。(1)インテインによる連結では、連結箇所のアミノ酸がシステインである必要があるが、Hefタンパク質では連結部分のアミノ酸はトレオニンとセリンであるため、システインの代わりにトレオニンやセリンでも連結可能かどうかを検討した。しかしながら、トレオニン、セリン、システインのいずれの残基でもヌクレアーゼドメインと天然変性領域の連結効率は低いことがわかった。これは、ヘリカーゼドメイン-天然変性領域間の連結に用いたスプリットインテインと天然変性領域-ヌクレアーゼドメイン間の連結に用いたスプリットインテインとの交差反応することを防ぐために、ヘリカーゼドメイン-天然変性領域間の連結に人工的にデザインしたスプリットインテインを用いたことに起因していることが明らかとなった。(2)粗視化MDでは構造サンプリングが十分ではなく、実測のX線小角散乱データを十分再現できないことが問題であったため、計算パラメーターを変更して実施した。しかし、十分な改善は見られず、さらなる検討が必要であることが分かった。一方、天然変性領域のモデル構造をランダムに極めて多数作製し、実測のX線小角散乱データを再現できるアンサンブルを探索する方法(アンサンブル最適化法)では実測データを十分再現できるアンサンブルが得られた。この結果、ヘリカーゼドメインとヌクレアーゼドメインが有意に接近した構造が高い存在比率で得られ、この構造が機能と結びついていることが示唆された。(3)重水素化のために必要な大腸菌培養プロトコールについては、その手法を概ね確立することができた。
2: おおむね順調に進展している
Hefのヘリカーゼドメインと天然変性領域のインテインによる連結効率向上の目途がたったこと、粗視化MDによるX線溶液散乱データの解析でアンサンブル最適化法では実測データを再現できるアンサンブルが得られたこと、重水素化タンパク質の調製において大腸菌培養条件が概ね確立できたことなど、研究はおおむね順調に進展していると判断される。
今後は、未だ成功していないヘリカーゼドメインと天然変性領域との連結の実験条件を確立し、セグメント重水素化した全長HefのSANSデータを収集する。同時に、アンサンブル最適化法によるSANS/SAXSデータの解析を行って、Hefタンパク質全長の動的構造解析を推進していく。
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J. Biochem.
巻: 167 ページ: 597-602
doi: 10.1093/jb/mvaa008/5711295