研究実績の概要 |
一次繊毛は細胞外からの多様なシグナルを受容するアンテナとして、細胞の増殖・分化の制御や組織の形成・維持に重要な役割を担っている。本研究では、増殖抑制シグナル依存的な一次繊毛の形成機構を解明するため、主に、血清飢餓刺激による母中心小体からのCP110/Cep97複合体の除去機構について解析し、本年度は以下の結果を得た。また、Cep97/CP110除去による軸糸微小管の伸長機構について、Cep97/CP110結合タンパク質であるCep104について解析し、以下の結果を得た。 1)血清飢餓刺激によってCep97がユビキチンープロテアソーム系によって分解されることを見出した。また、ユビキチン化されないCep97変異体(3KR)は中心体に集積することを見出した。 2)E3リガーゼの阻害剤を使った実験や、網羅的な発現抑制実験や、蛍光可視化免疫沈降アッセイ(VIPアッセイ)を用いたCep97との網羅的な結合実験により、Cep97のユビキチン化に関わるE3リガーゼとして、Cul3-KCTD10-Rbx1複合体を同定した。 3)上記のE3リガーゼの構成タンパク質(Cul3, KCTD10, Rbx1)の発現抑制によって、Cep97の分解、Cep97/CP110の母中心小体からの除去、一次繊毛形成が抑制されることを見出し、Cul3-KCTD10-Rbx1複合体の一次繊毛形成における重要性を明らかにした(Nagai et al., JCS, 2018)。 4)Cep104のTOGドメインが微小管重合活性を持つこと、Cep104のノックダウン/レスキュー実験により、Cep104の微小管重合活性が一次繊毛の伸長に必要であることを明らかにした。
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