研究課題/領域番号 |
18H02399
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
堀江 朋子 (川俣朋子) 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 助教 (70435527)
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研究分担者 |
中西 広樹 秋田大学, 生体情報研究センター, 助教 (10466740)
佐々木 雄彦 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 教授 (50333365)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | オートファジー / 脂質分解 / オートファジックボディ / リパーゼ / Atg15 / リピドーム解析 / 液胞/リソソーム / 代謝 |
研究実績の概要 |
オートファジーは真核生物が持つ主要な分解システムである。オートファジーの分子メカニズムはAtgタンパク質の機能解析を通じて明らかになりつつあるが、これまでオートファジー関連膜を構成している膜脂質についての情報は殆ど無い。また、液胞/リソソーム内での膜脂質の分解機構も未だ不明である。オートファジー関連膜の単離方法と微量なオルガネラの脂質解析技術が整備されていないかったことがそのおおきな理由である。研究代表者はこれまで、オートファジー関連膜構造体の精製を試みており、酵母においてオートファゴソームの内膜構造体であるオートファジックボディの単離精製に現在成功しつつある。そこでまず酵母においてオートファジー関連膜の組成についてリピドーム解析を駆使し、分子種レベルで明らかにすることを目的として実験を開始した。また、液胞/リソソーム内での膜脂質分解について、液胞膜タンパク質であるAtg15に着目し、in vitroリパーゼアッセイ系を構築することで、液胞/リソソーム内での膜脂質の分解を理解することを目的として設定した。
4年間の研究計画のうち、初年度(今年度)は、純度の高いオートファジー関連膜構造体の単離精製と、Atg15の単離という、いわば本研究の礎となる最も基本的な酵素と基質側の材料の調整法について、生化学的手法を駆使して行ってきた。また、Atg15の精製の過程でAtg15と共に共沈降してくるタンパク質の同定を、質量分析計を利用し行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)オートファジー関連膜の脂質解析 初年度の一年間で、オートファジーを誘導した細胞からオートファジックボディ(オートファゴソームの内膜成分)を含む液胞を単離し、そこからオートファジックボディと液胞膜画分の精製方法を確立させた。オートファジックボディには、基質として取り込まれた膜成分(例えばオルガネラ由来の膜脂質)も含まれる。そこで、次段階の精製ステップとして、純粋なオートファジックボディの内膜成分だけを抽出し、基質の膜脂質を効率よく除去する方法を検討している途中である。 2)Atg15による膜脂質分解のin vitro再構成系の確立 Atg15はリパーゼと推定されているが、生化学的な酵素活性の確認はまだ確実にとれていない状態である。その大きな理由は、Atg15はとても不安定な膜タンパク質であり、細胞内での発現量も低く、発現精製が困難である。そこで、Atg15を生化学的な活性がある状態で酵母細胞から大量精製、可溶化することを試みている。平行して、精製したAtg15を用いた活性評価系の構築を行っている。上記1)で精製したオートファジックボディを基質として利用し、感度の高い活性評価系の確立を行ってきた。 3)Atg15と結合する因子はこれまで確認されていないが、Atg15と結合して機能する因子がある可能性があるため、上記2)でのAtg15の精製の過程でAtg15と共に共沈降してくるタンパク質の同定を、質量分析計を利用し行った。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、初年度において確立させた手法を用いて、オートファジックボディの脂質解析を進める。代表的なグリセロリン脂質について脂肪酸部分にも着目した定量的解析を行い、各膜成分の構成脂質を、分子種レベルで明らかにする。内膜成分については、オートファジックボディの解析を行う。その後、ERやミトコンドリア特異的なオートファジーを欠損させた株で比較実験を行い、オートファジックボディを構成する脂質を決定する。Atg15による膜脂質分解の再構成系を用いて、次に基質特異性の有無、至適温度、pH、イオン要求性、活性化・阻害条件(還元剤等)についても明らかにする。Atg15は液胞膜タンパクであるが、液胞膜には作用しない。そこで、その生化学的な検証実験を行う。Atg15と結合する因子については、その欠損によりオートファジーによる膜分解への影響を探る。
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