今年度は、細胞膜のイノシトールリン脂質を急速に操作する手法について、光遺伝学的手法による解析システムの構築にも取り組んだ。イノシトールリン脂質制御酵素の酵素ドメイン(PI4P脱リン酸化酵素であるSac1の酵素ドメインなど)を植物由来のCIBに融合し、一方で、同じく植物由来のCRY2をミリストイル化により細胞膜に局在するように設計した。これらを細胞に発現させ青色光を照射することで、CRY2とCIBの二量体化を誘導し、細胞膜のイノシトールリン脂質レベルをライブイメージングにより検討したところ、期待通り種々の細胞膜イノシトールリン脂質レベルが変化することが確認できた。 また、前年度から引き続き検討していた新規・小胞体―細胞膜接触部位局在分子についての解析を行った。その新規分子の機能を探るため、まずAPEX2を用いた近傍分子ラベル化法により、その結合タンパク質もしくは近傍に存在するタンパク質の候補として、シグナル伝達、細胞骨格、脂質代謝、膜輸送などの経路において機能する分子群を複数得ることができた。さらに、アミノ酸配列から予想される機能ドメインやモチーフの変異体などを作成し、新規・小胞体―細胞膜接触部位局在分子の局在化機構や動態をイメージングにより解析した。 個体レベルでの解析としては、オキシステロール結合タンパク質ファミリーのノックアウト・ゼブラフィッシュの組織学的解析を行った。成魚について、脳、肝臓、腎臓、筋組織などを中心に、データベース等によるmRNAの組織発現レベルや、マウス組織を用いたタンパク質発現レベルの解析などを考慮して、他の組織についても解析を行った。
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