研究課題
生細胞の形質膜上で、ラフト親和性のガングリオシド(糖脂質)の蛍光プローブ(天然物と同様に振る舞うことを確認)を合成し、それを高精度1分子観察した結果に基づき、我々は新しいラフト仮説を次のように提案した。ガングリオシドは、特異的相互作用でホモダイマーを形成し、ラフトの最小単位(基本ユニット)となる。糖脂質の基本ユニットは、膜受容体の活性制御を行なう。本研究では、この仮説を検証してきた。前年度までに、1)ガングリオシドのホモダイマー形成に一般性があること、2)ガングリオシドのホモダイマーは、特異的糖鎖相互作用により形成されること、3)ガングリオシドホモダイマーはラフト脂質をリクルートし、小さなラフトを形成すること、を検証できた。この結果は、4)全原子の分子動力学計算でも支持された。さらに、5)GM3との相互作用やEGF受容体ダイマー形成の制御に重要なEGF受容体のN型糖鎖を同定することができた。今年度は、a)単にGM3ではなく、そのホモダイマーが、EGF受容体と相互作用すること、b)GM3ホモダイマーとの相互作用により、EGF受容体のダイマー形成と活性化が抑制されること、c)GM3ホモダイマーはラフト内にあるが、EGF受容体はラフト外にあり、糖鎖―糖鎖相互作用により、GM3ホモダイマーとEGF受容体が相互作用することを見出した。本研究によって、ガングリオシドは特異的な糖鎖―糖鎖相互作用により短寿命のホモダイマーを形成するが、そのホモダイマーは特異的糖鎖相互作用により、EGF受容体のダイマー形成と活性化を抑制することが明らかになった。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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