研究課題/領域番号 |
18H02403
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
加藤 洋平 京都大学, 薬学研究科, 講師 (90568172)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 一次繊毛 / 繊毛病 / IFT複合体 / トランジションゾーン / 中心体 / モータータンパク質 |
研究実績の概要 |
一次繊毛は細胞のアンテナとして機能するオルガネラであり、その異常は多様な重篤症状を呈する繊毛病を引き起こす。一次繊毛の形成や機能維持において基盤となるのが繊毛内に受容体等を運ぶ繊毛内タンパク質輸送(intraflagellar transport: IFT)システムである。IFTシステムを司るIFT装置は合計40種類以上のタンパク質から成る巨大で複雑な分子マシンである。本研究では多様なアプローチによる解析によって、IFT装置の動作原理および繊毛病の分子基盤の解明を目指している。 IFT装置はIFT-A複合体、IFT-B複合体、ダイニン-2、キネシン-2、およびBBSome複合体が一体となった超複合体として繊毛内タンパク質輸送を担っている。しかし、IFT装置を構成する複合体同士がどのように相互作用し全体として機能しているのかはほとんどわかっていない。本年度はIFT複合体とBBSome複合体間の相互作用様式および機能の解明を目的とした。まず、私たちが開発した「観るだけでわかるタンパク質間相互作用解析法(VIPアッセイ)」を駆使した解析を行い、BBSome複合体とIFT-B複合体がBBS1、BBS2、BBS9とIFT38を介して相互作用することを明らかにした。次に、BBS1+BBS2+BBS9との相互作用能を欠くIFT38変異体をIFT38ノックアウト(KO)細胞に外因的に発現させたレスキュー細胞の表現型を解析した。この細胞では繊毛の形成は回復したが、BBS1-KO細胞と同様に、ヘッジホッグシグナルを活性化させた場合にGPR161が繊毛外へ排出されずに繊毛内に蓄積することが判明した。これらの結果から、IFT-B複合体とBBSome複合体の相互作用は繊毛ゲートを越えたGPR161の排出に必要であることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに行った研究課題は以下の5つである。 (1) IFT-B複合体とBBSome複合体との相互作用様式および機能を解明し、論文として発表した(Nozaki et al. (2019) Biol. Open)。(2) IFT-A複合体とIFT-B複合体の相互作用様式および機能を解明した。現在、論文投稿準備中である。(3) 繊毛基部のトランジションゾーンを構成するMKS1、B9D1、B9D2の相互作用様式および機能を解明した。現在、論文投稿中である。(4) 繊毛に局在するリン酸化酵素のICKとIFT複合体との相互作用様式およびICKの機能を解明した。現在、論文投稿中である。(5) 膨張顕微鏡法を用いた繊毛の超解像イメージング技術を確立した。現在、論文投稿中である。 いずれの課題も論文として発表済み、もしくは発表見込みであるため、本研究課題は概ね順調に進展していると評価している。
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今後の研究の推進方策 |
まず、昨年度までに行った研究成果を論文にまとめて投稿する。すでに投稿中の論文に関しては、査読者のコメントに応じて追加実験などを行った後に再投稿し、論文として発表する。 IFT装置を構成する複合体同士の相互作用のうち、IFT複合体とダイニン-2複合体との相互作用様式が未だ解明されていない。今後はIFT複合体とダイニン-2複合体との相互作用に関与するサブユニットの同定をVIPアッセイを駆使して行う。相互作用に必要なサブユニットを同定した後は、そのIFT複合体のサブユニット遺伝子やダイニン-2複合体のサブユニット遺伝子をCRISPR/Cas9システムを用いてノックアウト(KO)し、それらKO細胞の表現型を蛍光顕微鏡を用いて観察することで、 繊毛形成および繊毛内タンパク質輸送に対する影響を明らかにする。さらにレンチウイルスベクターを用いて、KO細胞に野生型遺伝子や変異型遺伝子を発現させたレスキュー細胞を樹立し、それらの細胞の表現型を比較することでIFT複合体とダイニン-2複合体との相互作用の役割を解明する。また、これまでに研究した以外のトランジションゾーン構成タンパク質や繊毛局在リン酸化酵素に関して、上記と同様に相互作用解析とKO細胞の表現型解析を行い、IFT装置の制御機構を解明する。
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