研究課題
大腸菌膜内切断プロテアーゼRseP は膜内切断プロテアーゼであり、抗σ因子 RseA を切断して表層ストレス応答に関わることや、分泌タンパク質から切除されたシグ ナルペプチドを膜中で分解することが報告されている。 Small Membrane Protein (SMP)を対象として ReP の 新奇基質探索を行い、13 種類の SMP が RseP によって切断されうることを明らかにし た。これらSMP の一つである HokB は toxin-antitoxin system を構成す る toxin タンパク質であり、内膜に挿入され膜中で多量体化し小孔を形成することが知 られている。この小孔は細胞内 ATP の流出や膜電位の消失を誘導し、細胞を休眠状 態に移行させる。休眠状態となった細胞は抗生物質に曝されても高い生存率を示す 「persister」となることが近年報告された。RseP が HokB の膜内切断を通して細胞の persister 状態を制御している可能性を検討した。HokB の過剰発現に伴って細胞内 ATP が細胞外に 流出すること、この 流出がReP の共発現に伴って抑制されることを示し、 この時RseP によって HokB が切断されていることを示した。さらに HokB ホモログ HokE を過剰発現させると細胞毒性を示すこ と、RseP の共発現によってその毒性が抑制されることを示した。これら結果は RseP が HokB の 切断を介して、その機能を抑制しうることを示唆す る。RseP が HokB の切断を介して persister 状態の解 除に働く可能性を考え、さらなる検討を進めている。
2: おおむね順調に進展している
RsePの個室候補としてのSMPについて研究を進め、複数のSMPがRsePにより切断をを受けうることを明らかにした。また、そのうちHokBについ解析をすすめ、RsePの切断がHokB機能調節を通じて、Persisterとしての休眠からの覚醒に寄与する可能性があることを示すものである。これは、膜内切断プロテアーゼがPersister形成に関わる事を示唆する予想外の知見である。このような点で、本家級は概ね順調に進んでいると判断する。
SMPの解析については、新たな発見もあり、概ね順調に進んでいるが、RsePによる基質切断機構の解析に関しては、後術的な面から困難を生じている。今後は、HokB及びその他のSMP切断の意義の解析と共に、基質切断機構についても問題を克服して進めて行きたい。
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