研究課題
本研究は、歪みの無い走査透過型電子顕微鏡像を用いて、像の数を集めるのが難しい対象の構造解析を行うことを目指している。2018年度は、アクチン-フォルミン複合体、アクチン線維端、アクチン線維上のコフィリン結合クラスタ境界の構造解析のための負染色法による条件検討を行った。通常の透過型電子顕微鏡よりも像のひずみがすくなく、構造解析が小数の像で済むことはわかっているが、アクチン-フォルミン複合体はフォルミンの形が一定でないことが確認され、走査透過型電子顕微鏡をもってしてもかなり多くの像が必要であることがわかった。アクチン線維端については良好な条件が得られつつある。コフィリン結合クラスタについては、結合クラスタのB端側境界は、コフィリン結合の影響はコフィリン結合領域に限られそうであるという感触を得ることが出来た。一方P端側境界は多く観察することができず、コフィリンによる線維切断が起きにくいといわれている低pH条件でも、結合クラスタP端側境界はほぼ切断されていることが示唆された。得られた少数の像については、コフィリンの結合が、コフィリン非結合領域まで構造変化をもたらしているらしい様子が見られたが、まだ3例しかなく、観測条件の更なる検討が必要である。また、同時に走査透過型電子顕微鏡のクライオ法への適用に挑戦している。日立ハイテクとの共同研究で、クライオホルダの開発を行っているが、温度ドリフトが大きい。当面は、ホルダの開発とともに、高速データ取込によるドリフトの影響の軽減を目指している。
2: おおむね順調に進展している
2018年度の目標は各対象の条件検討であった。これについてはさらなる検討が必要ではあるが、おおむね予定通りに進んでいる。
アクチン線維端については、高分解能構造解析を目指す。他の対象についてはもう少し条件検討が必要であり、今後も継続する。
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Proc Natl Acad Sci U S A
巻: 115 ページ: E5000-5007
pnas.1803415115