研究課題/領域番号 |
18H02414
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研究機関 | 国立遺伝学研究所 |
研究代表者 |
木村 暁 国立遺伝学研究所, 遺伝メカニズム研究系, 教授 (10365447)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 線虫 / 細胞核 / 細胞質流動 / オルガネラ / 力学 / 数理モデル |
研究実績の概要 |
本研究では、「細胞核の細胞中央への移動」と「細胞質流動の発生」におけるオルガネラの力学的な役割を定量的に明らかにすることを通じて、『真核生物の細胞内小器官(オルガネラ)が細胞内の大規模な空間再配置に必要な力学的要素として働いている』とするコンセプトを確立することを目指す。2018年度の主な進展は以下の通りである。 「細胞核の細胞中央への移動」に関しては、関与が疑われるオルガネラ(エンドソーム、リソソームなど)を細胞全体にわたって高速で3次元的に撮影する方法の確立に成功した。また、オルガネラを力学的要素として構築した数理モデルで、細胞核の移動の原動力となる中心体の配置を説明できることを示し、発表を行った(Kondo & Kimura, 2019)。遠心顕微鏡を用いた細胞内力測定については、米国にある遠心顕微鏡を2019年度に利用して測定するための準備を進めた。 「細胞質流動の発生」においては、細胞内への磁気ビーズの導入方法について検討を行っている。まだ再現性良く導入するには至っていないが、可能性の高い方法を見出した。磁気ビーズの導入方法を確立できれば、磁気ピンセット技術を用いて、オルガネラの物性や発生する力を測定したり制御したりすることが可能となる。また、細胞質流動においても、その原動力の力学的要素として重要な小胞体(ER)を、高速で3次元的にイメージングすることが重要であり、その撮影方法の確立にも成功している。 以上のように研究課題は着実に前進している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画として掲げた、(i) 遠心顕微鏡を用いた細胞内力測定、(ii) 磁気ピンセットを用いた細胞内力測定、(iii) 細胞内オルガネラの挙動の高速3次元イメージング、(iv) 数理モデルの構築、のいずれについても着実な進展が認められ、計画通りに進んでいるため。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度には、遠心顕微鏡を用いた細胞内力測定を実施し、細胞核を動かすのに必要な力の大きさを定量化する。さらに、高速3次元イメージングを通じて、細胞全体でオルガネラがどのタイミングで、どれくらいの数動いているかを定量化する。これらを通じて、「本当にオルガネラの移動で核の移動に十分な力をまかなえるのか?」という問いに答える。 ERの粘弾性を測定のために、磁気ビーズの細胞内への導入と、その磁気ピンセットによる操作技術を確立する。さらには、ERのイメージングを通じて、「ERが動くことによって微小管の方向が変わるか?」また「ERは微小管上をどれくらいの頻度で動くか?」という問いに答える。 これらの実験を踏まえて、2020年度には、核の配置と細胞質流動に関する数理モデルを構築し、オルガネラが果たす役割を定量的に理解する。
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