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2018 年度 実績報告書

トランスポーターの基質輸送速度を変える変異の理論的予測

研究課題

研究課題/領域番号 18H02415
研究機関分子科学研究所

研究代表者

岡崎 圭一  分子科学研究所, 理論・計算分子科学研究領域, 特任准教授 (50792529)

研究分担者 渡邉 力也  東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 客員研究員 (30540108)
研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワードトランスポーター / 分子動力学シミュレーション / 遷移パス / 生体膜マイクロチップ
研究実績の概要

本研究課題では、トランスポーターが基質を輸送する際の構造遷移ダイナミクスを分子動力学シミュレーションで明らかにして、そこから基質輸送速度を変える変異の予測をする。そして、実験で基質輸送能の測定を行い改変を確認する。これにより、トランスポーターのデザイン原理を明らかにするのが目的である。
今年度は、古細菌由来のNa+/H+交換輸送体であるPaNhaPによるナトリウムイオン・プロトン輸送ダイナミクスの全原子シミュレーションを行った。まず、構造未知の外向き開構造のモデリングを行った。フレキシブルフィッティングと長時間平衡シミュレーションにより、安定な外向き開構造を得ることができた。これで、交互アクセスメカニズムにおける内向き開構造と外向き開構造が揃った。次に、遷移パスサンプリング法を応用して、内向き開構造と外向き開構造間遷移の反応座標の最適化と遷移バリアの頂上からのシューティングとを繰り返して、効率的に遷移パスを得ることができた。コミッター関数を用いた尤度を最大化することで、反応座標を最適化した。この反応座標の最適化により、遷移状態を良く記述する特徴量として、疎水性ゲートの開閉とトランスポータードメインの上下運動を同定することができた。特に、疎水性ゲートは、基質イオン結合サイトへの細胞膜外側からのアクセスを制御しているが、このゲートが開いて水分子が流入することが構造遷移の1つの律速過程になっていることを示した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

Na+/H+交換輸送体であるPaNhaPにおける基質イオン輸送ダイナミクスを分子動力学シミュレーションで明らかにすることができた。これにより、トランスポーターの構造遷移シミュレーションにおいて、遷移パスサンプリング法を応用した方法が有効であることが分かった。特に、遷移パスシューティングと反応座標最適化を繰り返すことで、構造遷移に重要な動きや相互作用を抽出できることが分かった。このような結果が今後、基質輸送速度を変える変異の予測につながると期待できる。

今後の研究の推進方策

今後は、シミュレーションで得られた遷移パスをもとに、系統的に基質輸送速度を変える変異を予測する手法を確立していく。遷移パスにおいて相互作用を変化させる残基ペアの詳細な解析により、特定の残基の変異がキネティクスに与える影響を予測する。さらに、基質輸送能測定実験の準備を進めて、予測された変異が与える影響を実験的に確かめて予測システムにフィードバックする。PaNhaP以外のトランスポーターへの応用も考えたい。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2019 2018 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 3件、 招待講演 5件)

  • [国際共同研究] マックスプランク生物物理学研究所(ドイツ)

    • 国名
      ドイツ
    • 外国機関名
      マックスプランク生物物理学研究所
  • [学会発表] 遷移パスサンプリングによる膜輸送タンパク質の基質輸送メカニズムの解明2019

    • 著者名/発表者名
      岡崎圭一
    • 学会等名
      スーパーコンピュータワークショップ2018
    • 招待講演
  • [学会発表] Mechanism of electroneutral sodium/proton antiporter from transition-path shooting2018

    • 著者名/発表者名
      Kei-ichi Okazaki
    • 学会等名
      Institute Seminar, Max-Planck Institute of Biophysics
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 生体分子マシンにおける機能ダイナミクスの解明2018

    • 著者名/発表者名
      岡崎圭一
    • 学会等名
      生物物理若手の会第58回夏の学校
    • 招待講演
  • [学会発表] Mechanism of Na+/H+ antiporter from transition-path simulations: Making faster transporter based on mechanism2018

    • 著者名/発表者名
      Kei-ichi Okazaki
    • 学会等名
      Workshop: Trends in Computational Molecular Biophysics
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Transport mechanism of sodium/proton antiporter from transition-path simulations2018

    • 著者名/発表者名
      Kei-ichi Okazaki
    • 学会等名
      the 2nd workshop on Advances in Theory and Computation of Complex Systems --- Biological Systems
    • 国際学会 / 招待講演

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公開日: 2019-12-27  

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