研究課題
共進化による新規tRNA・aaRS(具体的には、グルタミルtRNA合成酵素(GlnRS))のペアの創出、及び新規の非天然アミノ酸(メチルグルタミン、MetQ)に特異的なaaRS変異体の作製に取り組んだ。MetQは、グルタミン側鎖のアミノ基がメチル化されたアミノ酸である。翻訳終結因子やヒストン・タンパク質等に見出されている修飾型アミノ酸だが、メチル化酵素の働きにより生成されるものであり、拡張遺伝暗号の中でMetQとして遺伝的にコード化されたことはない。MetQに特定のコドンを割り当てることで、人為的に部位特異的なタンパク質への導入が可能になり、MetQ化されたタンパク質の性質や機能を調べられるようになる。GlnRSのグルタミン結合ポケットを構成し、側鎖アミノ基の認識に関わるか、その近傍に存在するアミノ酸残基5つを選んでランダムに変異させた。ライブラリーサイズの理論値(320万)は遺伝学的なセレクションを行うには適したサイズである。作製されたライブラリーから変異体をいくつか取り出して塩基配列の解析を行い、ランダムに変異が導入されていることを確認した後、アンピシリンを利用するカウンターセレクションを行った。このセレクションは、グルタミンに対する認識能が低下する一方で、MetQを認識するようになったGlnRS変異体を単離するためのものである。並行して、GlnRSのアミノ酸結合部位を含むN末ドメイン全体にランダムな変異を低い効率で導入した変異体ライブラリーを作製して、同様のセレクションに使用した。これは、5つの限定されたアミノ酸残基以外にも効果のある残基を見出すためである。これまでのところ、1つめのライブラリーからは有意な活性を持つ変異体は得られていないが、2つめからはMetQの認識に関わると思われるアミノ酸残基を新規に見出しており、さらに活性を改善するための実験を進めている。
3: やや遅れている
YtRNA(Gln-)を認識するGlnRS変異体は得られているが、この変異体は本来の基質である内在性のグルタミンtRNAも認識していることを示唆するデータも得られている。YtRNA(Gln-)に対する特異性を改善するために、MetQに対する認識を利用したセレクションを行うことも計画している。
これまでGlnRSのtRNAアンチコドン部位に集中的に変異を導入してきたが、tRNAのアクセプター・ステムに変異を導入することで、tRNA特異性を改善することを狙う。アクセプター・ステム末端には、重要な酵素認識ヌクレオチドが存在しており、酵素(GlnRS)側の変異によってYtRNA(Gln-)のアミノ酸結合活性が改善する可能性がある。さらに、GlnRSのアミノ酸特異性の改変を並行して進め、メチルグルタミンをタンパク質に導入する変異体を取得する計画である。
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