研究課題
ヒストン修飾は、修飾付加酵素(writer)、除去酵素(eraser)、そしてシグナル伝達の実行部隊としである修飾読み取り分子(reader)の三者の協調的作用によってエピゲノム制御に貢献している。ほ乳類性決定遺伝子であるSryの発現は、発現する細胞種・発現のタイミング・発現の量が最も厳密に制御されている遺伝子の一つである。申請者は2013年に、H3K9メチル化eraserであるJmjd1aがSry活性化に寄与することを示した。加えて最近、H3K9メチル化writerであるGLP/G9a複合体が、eraserと拮抗して作用することでSry発現チューニングに貢献していることを明らかにした。本研究では、残された課題である、Sry制御の実行部隊であるH3K9メチル化readerを同定することを目標とする。この研究によって、Sry発現制御のエピジェネティックな分子機構を包括的に理解することが可能になる。H3K9メチル化reader候補分子は、クロモドメインタンパク質であるCdylファミリー(Cdyl、Cdyl2)とHP1ファミリー(HP1α、HP1β、HP1γ)の五つを挙げた。平成30年度の目標は、マウス受精卵を用いてCRISPR/Cas9によるゲノム編集を施すことで、これらの各分子の欠損マウスを樹立することであった。その結果、Cdyl、Cdyl2、HP1α、HP1βの欠損マウスの樹立に成功した。さらに、これらの変異マウスのうちHP1αとHP1βの欠損マウスについて、E13.5日胎児の生殖腺の性分化の表現型、および成体マウスの生殖器の表現型(精巣か卵巣か)についての解析を進めた。
2: おおむね順調に進展している
H3K9メチル化reader候補分子は、クロモドメインタンパク質であるCdylファミリー(Cdyl、Cdyl2)とHP1ファミリー(HP1α、HP1β、HP1γ)である。平成31年度の目標は、ゲノム編集によってこれらの遺伝子変異マウスを樹立することであった。目標としていた5系統のうち、HP1γを除く4系統の欠損マウスを作製できた。さらに、これらの変異マウスのうちHP1αとHP1βの欠損マウスについて、性分化の表現型を解析データも集積しつつある。この研究経過は当初予定したものとほぼ同じであるため、概ね順調に進呈していると判断した。、
Cdyl、Cdyl2、HP1α、HP1βの欠損マウスを用い、それらの変異マウスの性分化の表現型の解析を行う。E13.5日胎児の生殖腺を、Foxl2(卵巣細胞のマーカー)とSox9(精巣細胞のマーカー)に対する抗体で二重染色し、胎仔期生殖腺の性分化を定量化する。生まれてきた産仔について、外部生殖腺と内部生殖腺の表現型解析を行う。また、これらのreader候補分子を欠損させたマウスにおけるSryの発現レベルを、免疫組織染色法および定量的RT-PCR法によって解析する。平行し、これまでに作製できていないHP1γの欠損マウスを樹立を試みる。
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すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件、 招待講演 4件) 備考 (1件)
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