申請者は、高精度のゲノム配列を持つシロイヌナズナにおいて、遺伝子間領域に、約8000個のペプチド性遺伝子(<100aa)を新規に推定した。その後、新規のペプチド性遺伝子の機能を明らかにするために、組織間で発現の多様性を持ち、他の生物種にも保存性を示す、約1000個のペプチド性遺伝子を過剰発現させた形質転換体を構築した。共発現解析により、形態形成を引き起こすペプチド性遺伝子には、ホルモン様ペプチドをコードしている遺伝子が多数含まれていることが予想できた。そこで、本研究課題では、過剰発現によって極端な矮化を引き起こす一つのペプチド性遺伝子(AT32)に着目し、この遺伝子がホルモン様ペプチドとして機能する証拠を示す。 AT32の生理活性としては、AT32がブラシノステロイドのシグナル経路を遮断する機能を持つことを2018-2019年度で明らかにした。しかし、AT32が、ブラシノステロイドのシグナル経路のどこに働き、遮断しているかは不明であった。AT32は、細胞外に分泌するペプチドであるため、細胞膜に機能すると考えられた。すなわち、ブラシノステロイドの受容体であるBRI1に直接結合し、拮抗阻害をすると予測できた。そこで、AT32を過剰に発現させた形質転換体とBR1あるいはBRI1のホモログであるHAESA、CLAVATA1を免疫沈降させ、BRI1のみにAT32が結合しているかをプロテオーム解析で調べた。その結果、BRI1を免疫沈降させて時のみで、AT32が見出された。この結果は、AT32がBRI1と複合体として、直接あるいは間接的に相互作用を示していることを示唆している。つまり、AT32は、ブラシノステロイドの受容体であるBRI1と、おなじ受容体を共有していることが示唆できた。
|