研究課題/領域番号 |
18H02423
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研究機関 | 基礎生物学研究所 |
研究代表者 |
片岡 研介 基礎生物学研究所, クロマチン制御研究部門, 助教 (80784959)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ヘテロクロマチン / HP1 / トランスポゾン / ゲノム再編 / テトラヒメナ |
研究実績の概要 |
テトラヒメナの大規模ゲノム再編を誘導する高次クロマチン構造の形成機構の解明を目指して、本年度は、ヘテロクロマチンに局在する全7種のHP1様タンパク質に対して、遺伝子破壊株が樹立されていない3種についての遺伝子破壊株の作成を目指した。1種のHP1様タンパク質に関しては、ホモ遺伝子破壊株が樹立でき、完全な遺伝子破壊を確認した。残りの2種に関しては、ヘテロの遺伝子破壊株が準備でき、うち1種に関しては、ヘテロ株同士の掛け合わせでは、生存可能なホモ遺伝子破壊株が得られないことがわかった。したがって、このHP1様タンパク質は、他のHP1様タンパクとは異なる新たな役割を持つことが期待される。HP1様タンパク質のメチル化ヒストン認識能の違いを検討するため、全7種のHP1様タンパク質のクロモドメインをリコンビナントタンパク質として調製することを試み、6種のリコンビナントタンパク質を準備できた。これらのタンパク質について、ヒストンH3の9番目または、27番目がメチル化された(H3K9me3/H3K27me3)ペプチドとの結合能をプルダウンアッセイで検討したところ、3種のHP1様タンパク質は、H3K9me3およびH3K27me3両方に結合すること、1種はH3K9me3により強く結合することが明らかになった。以上の結果は、複数のHP1様タンパク質が異なる様式でクロマチンに結合することを示唆している。また、各HP1様タンパク質間およびその他のヘテロクロマチン構成タンパク質間の相互作用を網羅的に解析するために、酵母ツーハイブリッド法を用いて、1対1対応の相互作用を網羅的に検討した。全1,128の組み合わせを検討し、複数のHP1様タンパク質を含むヘテロクロマチンタンパク質間のネットワークを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに、テトラヒメナのヘテロクロマチンを構成するタンパク質間の相互作用はほとんど明らかにされてこなかったが、今回行った酵母ツーハイブリッド法を用いた網羅的な解析により、ヘテロクロマチン内のネットワークが明らかになり、ヘテロクロマチン構造の形成機構の理解を目指す上で、画期的な成果であると高く評価できるため。
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今後の研究の推進方策 |
生存に必須のHP1様タンパク質に関しては、誘導型RNAi法によるヘテロクロマチン形成時特異的なノックダウンを試み、ヘテロクロマチン構造形成とDNA削減への関与を検討する。酵母ツーハイブリッド解析により明らかになったヘテロクロマチン内のネットワークに関しては、中心的な複合体候補について、テトラヒメナ細胞内での相互作用を免疫沈降法により検討する。
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