研究課題
本研究では、シングルセル遺伝子発現解析、微量エピゲノム解析、先端的イメージング等の新手法を駆使し、多能性幹細胞幹細胞の分化状態の遷移過程におけるエピゲノムダイナミクスとその意義を追求することを目的とし、以下の研究を実施して来た。1)着床前後のマウス胚の多能性細胞、およびそのin vitroモデルである多能性幹細胞のnaive-primed転換過程の遺伝子発現、エピゲノム変動の意義解明:R1年度は、シングルセルRNA-Seqに加えて、シングルセルCAGE(Cap Analysis of Gene Expression)法を用いて、naive-primed転換プロセスの解析を行った。CAGE解析は、cDNAの5'末端の配列を決定することにより、プロモーター活性の測定や、polyA鎖を持たないRNAや非翻訳性RNAの発現、さらにはエンハンサーから転写されるRNAの検出も可能であり、シングルセルRNA-Seqと組み合わせることにより、転写動態を多角的に解析することが可能である。そこで、分化誘導後、Day0からDay4までの5点で計587個の細胞を単離し、CAGE解析を実施した。その結果, シングルセルRNA-Seq解析と同様に5つの細胞クラスターが検出され、そのうち一つでグローバルな遺伝子発現の低下が認められており、RNA-Seqの結果を裏付けることが出来た。加えて、分化段階特異的発現を示すエンハンサーRNAを複数検出することに成功した。2)細胞遷移過程の指標としてのX染色体不活性化プロセスの解析:アレル特異的発現解析を実施し、X染色体不活性化の開始点と思われる細胞クラスターを同定した。また、不活性化から逃れるエスケープ遺伝子を検索し、既知のエスケープ遺伝子の確認と共に新規エスケープ遺伝子の同定に成功した。
2: おおむね順調に進展している
シングルセルRNA-Seqに加えて、非翻訳性RNAやエンハンサーRNAの発現も検出可能なCAGE解析を実施し、RNA-Seq解析の結果を裏付けることが出来、かつ新規のエンハンサーRNAや非翻訳性RNAの検出とその分化プロセスにおける発現変動を記述することに成功した。また、雌細胞のみならず雄ES細胞を用いた同様な実験を実施し、現在、その結果を解析中であり、当初の予定に大きくはずれることなく、研究が進展している。
雄ES細胞を用いた実験結果を情報学的に解析し、雌で得られた知見との共通点、相違点を検索する。またナイーブープライム変換過程に出現した細胞亜集団の特性解析として、その分化能力の検定をin vitro, in vivoの実験系を用いて実施する。さらに、ナイーブープライム変換過程におけるDNAメチル化増大という大規模エピゲノム変動の生物学的意義をin vitro, in vivoの実験系を用いて解明する。また、変換過程で認められたグローバル遺伝子発現低下を示す特異な細胞集団の解析を行い、その作用機序と意義を解明する。
すべて 2019
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)
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