研究実績の概要 |
2018年度に遺伝子改変マウスの繁殖に遅れが生じていたが,分担研究者の追加により,繁殖は進んでいる. マウスの胸腺T細胞において,正負の選択に関わるシグナル伝達分子であるCD3e,pAKT, pPlcg, pERK, pmTOR, pZAP70,pS6, pMEK,pSTAT5をFACSで測定するための実験条件の検討を行った.t=0で細胞を刺激し,t=0, 1, 2.5, 5, 10, 20(分)のタイムコースでサンプルを取得し,10000個弱の細胞数を測定できることがわかった.その結果,シグナル伝達系の上流に位置し,入力とみなせるCD3eの分布は刺激後に時刻によらずあまり変化せず,2峰性の分布となることがわかった.しかし,下流のシグナル伝達分子種の活性が必ずしも2峰性になるとは限らないことも確認された. 10000個弱の細胞から情報量を計算するためには,サンプルから分布を推定する必要がある.単純なヒストグラムを用いて相互情報量を推定すると,ヒストグラムのビンサイズによって相互情報量が変わってしまう問題がある.そのため,適応的にビンサイズを決定する手法を導入して適切なビンサイズのヒストグラムを用いて分布を推定し,相互情報量を算出できるようにした.実際に相互情報量を算出したところ,FACSで測定されたタイミングと分子種によっては推定した相互情報量にバイアスが入ってしまうことが示唆され,バイアスは実験によるアーチファクトに起因している可能性があると考えている.
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