上皮組織は、異なる環境を分けるバリアとして働く。このバリア機能はタイトジャンクション( TJ )と呼ばれる細胞間接着装置によって担われる。TJの構成因子であるclaudinファミリーのノックアウトマウスは、胎生致死や脱水、難聴などの病態を示すことから、TJは生体内におけるバリア機能に必須の役割を果たしているといえる。一方で、TJがどのようにして形成されるかについては未だにほとんど不明であった。本研究の準備段階において我々は、上皮・中皮組織由来の分泌液中にTJ形成を誘導する液性因子が存在することを見出し、新しいペプチドを同定した。本研究では、このTJ形成ペプチドJIPを軸にした上皮組織のバリアシステム形成の解明を目指し、研究を進めてきた。今年度は、昨年度に引き続き本ペプチドJIPの作用メカニズムの解明に取り組んだ。これについてはドイツマックスプランク分子細胞研究所のグループと共同研究を実施し、様々な検討を行った結果、直接のターゲットの同定に成功した。このターゲットの過剰発現あるいはノックダウンを行い、JIPを介したTJの形成に必要十分であることを示すことができた。また、マウス組織中の内在性JIPの検出に成功し、その役割を解明した。さらに、昨年度から取り組んでいるDSS誘導性腸炎モデルについて、Lgr5-EGFP-IRES-creERT2マウスを用いてその病態の進行・治癒過程におけるTJ構築について詳細に解析を行なった。あわせて、ヒトJIPがDSS誘導性腸炎モデルに効果的であることがわかった。これらの結果をまとめ、現在論文投稿中である。
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