研究課題
遺伝性潜性パーキンソン病(PD)の原因因子 DJ-1の機能は諸説あるが、我々は「DJ-1がMethylglyoxalやGlyoxalなどのα-oxoaldehydeを基質にした加水反応を触媒し、α-hydroxy acidに変換する酵素活性を有する」ことに着目して本研究を行ってきた。DJ-1の上記酵素活性の生理的意義については、まだ不明な点が残されている。一方で本年度には、「DJ-1のα-oxoaldehyde hydrataseとしての活性」を反映した「DJ-1とGlyoxylic acidとの結合」と、「DJ-1のミトコンドリア移行」との間に、予期せぬ関連性を見出すことができた。DJ-1はユニークな細胞内局在様式を示し、PD患者由来の変異を有するDJ-1がミトコンドリアに局在する(小島 Genes Cells 2016 他多数)。この変異DJ-1の移行はミトコンドリア移行配列(MTS)を介すると予想されるが、DJ-1 には MTS となりえる両親媒性のαヘリックスが存在せず、「DJ-1のN-末端のbeta-strandの不安定化にともなってミトコンドリアに移行する」という新たな現象を反映していると考えられた。我々はDJ-1変異体のミトコンドリア移行を阻害する低分子化合物の探索を行い、その過程で Glyoxal の類似物質であるGlyoxylic acid が、DJ-1 変異体のミトコンドリア局在を阻害することを見出した。Glyoxylic acid はM26I変異のミトコンドリア移行を阻害する一方で、E18A変異体のミトコンドリア局在を阻害しなかった。この結果は、α-oxoaldehyde hydratase である DJ-1 が基質アナログの Glyoxylic acid と酵素基質結合を模倣した複合体を形成し、安定化することで細胞内局在が変化することを示している。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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