研究課題/領域番号 |
18H02444
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研究機関 | 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(新分野創成センター、アストロバイオロジーセンター、生命創成探究 |
研究代表者 |
青木 一洋 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(新分野創成センター、アストロバイオロジーセンター、生命創成探究, 生命創成探究センター, 教授 (80511427)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ERK / Akt / チェックポイント / 光遺伝学 |
研究実績の概要 |
細胞周期はすべての生命にとって必要不可欠な現象であり、細胞周期の制御機構は精力的に解析が進められてきた。とくに外部の栄養状態などを認識し、細胞周期を進めるかどうかを決定するG1-S期チェックポイントは基礎的にも臨床的にも重要である。この分子機構としては、成長因子によって古典的MAPキナーゼであるERKが活性化し、サイクリンDの発現、RBのリン酸化、E2Fによる遺伝子発現を介してG1-S期のチェックポイントが進行することが報告されている。しかし、連続的(アナログ的)に変動するERK活性がどのようにして離散的(デジタル的)で不可逆なG1-S期チェックポイントを誘導するのか、とくにその閾値の決定機構については全く明らかになっていない。本研究では、生細胞イメージングによるERK活性と細胞周期関連因子を可視化、定量化し、G1-S期チェックポイントのアナログ-デジタル変換による閾値決定機構を明らかにすることを目的とする。 本年度は、ERKとAktのレポーターと細胞周期レポーターの同時タイムラプスイメージングとその解析、RBのFRETバイオセンサーの構築、光遺伝学による細胞周期の操作を行った。MCF-10A細胞にERK、Aktのレポーターと細胞周期のレポーターを導入し、数日間にわたるタイムラプスイメージングを行い、画像解析によりデータを取得した。AktはERKと同様に確率的に活性化する発火現象を示すこと、またERKとAktの活性に強い相関があるが、S期においてERKとAktの活性が相関しない部分があることが分かった。RBのFRETバイオセンサーも開発しており、RBのリン酸化状態を反映してFRETが変化するということが分かってきた。光遺伝学によりERKとAktをそれぞれ別々に活性化できる系を開発した。その結果、ERKとAktを両方活性化させるとG1-S期を進行できることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ERKとAktの長時間イメージングの実験系は立ち上がった。またRBのFRETバイオセンサーはこれまでに全く報告されておらず、非常に価値がある研究結果が得られつつある。また、光遺伝学によりERK、Aktを単独で活性化した場合には細胞周期の進行が見られなかったが、両方を活性化させるとG1/S期進行を効率よく引き起こすことが出来たことは、新規性がある結果を取得することが出来た。これらの理由により、本研究課題はおおむね順調に進展していると結論づけた。
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今後の研究の推進方策 |
ERKとAkt、細胞周期状態の長時間タイムラプスイメージングの結果を統計解析し、ERKやAkt活性のどのような動態が細胞周期の進行に寄与するのかを定量的に示す。光遺伝学により、ERKやAktの活性化のダイナミクスを操作し、より効率よく細胞周期を進行させることが出来るかどうか検討する。RBのFRETバイオセンサーについては、CDKによってリン酸化されるサイトをすべてアラニンに置換した変異体を用いることで、FRET効率の変化にCDKによるリン酸化が関与しているのかどうかを検証する。
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