研究実績の概要 |
本年度は計画通り、「胚体外での生殖細胞の移動機構」を明らかにするべく、ニワトリ胚とその始原生殖細胞(PGC)を材料として研究を進めた。 代表者らは昨年度(2020年)、PGCが血管組織内に取り込まれる過程が、生殖三日月環と呼ばれる頭部側の胚体外領域にて起こること、そこでは血管内皮細胞がまだ脈管構造を作っておらず単独細胞のままであること、PGCはその単独の血管内皮細胞によって「包まれること」、そしてPGCを含んだ血管内皮細胞集団が血管形成を進め、結果的にPGCが血管内に存在場を移していることを免疫染色法によって明らかにし、論文報告を行った(Murai et al., 2021)。しかしながら、この一連の細胞機構については不明であった。そこで今年度(2021年度)は生殖三日月環領域のPGCと血管内皮細胞を生体内でラベルする手法の探索・改善を行った。血管内皮細胞については血管内皮細胞特異的エンハンサーレポーターのin vivoエレクトロポレーションによって達成することができた。一方のPGCの生体ラベルはトマトレクチン-FITCの投与によって達成することができた。これら手法を確立できたことで、両細胞のラベル施した胚を全胚培養し、共焦点顕微鏡にて細胞挙動を開始することができた。このタイムラプス解析から、PGCが近傍の血管内皮細胞へ向かって移動すること、PGCと血管内皮細胞が接触後血管内皮細胞が形態を変化させPGCを「包む」こと、「包まれた」PGCは運動を失うことなどの情報を得ることができた。以上の結果からは、血管内皮細胞がPGCを誘引する機構、血管内皮細胞がPGCを認識する機構が推定されている。現在はこれら細胞機構を裏打ちする分子機構を解明するべくCXCR4/SDF1シグナル、接着因子に注目したこれら分子の解析を続けている。
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