本研究は「ある動物グループに固有かつ共通の転写調節配列が作用する形態形成メカニズムが、共有派生形質を生み出す」という概念を、新奇形質の獲得とその喪失さらに収斂という現象に対して実証していくことを目的とする。ある動物群に固有かつ共通の特徴的形態(共有派生形質)の創出には、その動物群に固有かつ共通のゲノム配列が関与していることが予想され、そのようなゲノム配列の獲得によってもたらされる遺伝子発現と形態形成メカニズムの変化が共有派生形質を生み出すことが想定される。このような仮説を実証するために、多数種の全ゲノム配列が利用可能で(申請者の独自の系として)複数種の動物胚を入手できる鳥類を用い、比較ゲノム解析とRNAseqを併用して候補配列と遺伝子を絞り込み、複数の鳥類胚を用いて機能解析するという手法を用いてアプローチを試みている。 当該年度は主に、鳥類の中で収斂形態「水かき」の形成を主導する転写調節配列とその近傍遺伝子に関して解析を行った。水かき形態の収斂現象に関与すると考えられる遺伝子の近傍にある候補配列について、トランスジェニックマウスを用いたエンハンサー解析(in vivoレポーターアッセイ)を行うとともに、この近傍遺伝子に関しても薬剤を用いた機能阻害実験によって、水かき形成に対する機能を解析した。現在、これらの結果をまとめて論文投稿準備中である。
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