研究実績の概要 |
プルキンエ細胞は、小脳機能において重要な役割を果たす主要なGABA作動性ニューロンである。これまでの研究により、プルキンエ細胞はプロニューラル遺伝子ptf1aやneurogenin1を発現する神経前駆細胞から分化することが明らかにされている。また私達は、プルキンエ細胞にはFoxp, Skor, Lhx, Rorファミリーなどの転写制御因子が発生過程で発現していることをこれまでに明らかにしている。今年度は、ptf1a;neurogenin1変異体の小脳では、skor1b/2, foxp1b/4, lhx1a, rorbの発現が減少あるいは消失していることを明らかにし、これら転写制御因子がPtf1aやNeurogenin1の下流で機能していることを明らかにした。また、ptf1a;neurogenin1変異体では、GABA作動性介在ニューロンのマーカーであるpax2と広い樹状突起細胞(ゼブラフィッシュ小脳の投射ニューロン)のマーカーであるolig2の発現も減少しており、これらのニューロンの発生もPtf1a/Neurogenin1に依存することが示された。CRISPR/Cas9法により作製した、foxp1b;foxp4二重変異体、lhx1a;lhx1b;lhx5三重変異体はプルキンエ細胞が著しく減少し、skor1b;skor2二重変異体ではプルキンエ細胞が完全に欠如している代わりに顆粒細胞が著しく増加することを見出した。これらの結果は、Foxp1b/4、Skor1b/2、Lhx1a/1b/5がPC分化の初期段階において重要な転写制御因子として機能し、Skor1b/2は顆粒細胞への分化転換を抑制することによりプルキンエ細胞の分化を制御することを示している。本解析により、転写制御因子ネットワークによるプルキンエ細胞分化を制御機構の一端が明らかになった。
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