研究課題/領域番号 |
18H02456
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
藤井 壮太 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (90716713)
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研究分担者 |
和田 七夕子 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 助教 (50379541)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 雌蕊 / 花粉 / 受粉 / ライブイメージング / 化合物制御 |
研究実績の概要 |
(i)ポジティブな花粉排除機構の新奇遺伝変異のスクリーニング 昨年度までで、シロイヌナズナ種内の遺伝的多様性について新たな変異を見出し、NGS解析を行いながら現在原因となる分子を探索した.現在、候補原因因子を同定している段階であり、引き続き機能解析を行う. (ii)花粉排除機構を打破する化合物のスクリーニング ケミカルスクリーニングに向けて、100種類異常のSPRI1のアミノ酸置換体の機能解析を行った.その結果、SPRI1の機能に重要であるアミノ酸部位を特定することができた.例えば、アミノ酸67番目と80番目のシステインはSPRI1の機能に非常にクリティカルな役割を果たすことが明らかとなった.さらに、それらのアミノ酸が分子間、あるいは分子内でジスルフィド結合を形成する可能性を見出した.SPRI1の機能を制御する上で、本タンパク質のS-S架橋を標的とするようなケミカルデザインが有効であると考えられた. (iii)ライブイメージングによる異種花粉応答反応の解明 超解像顕微鏡を用いたSPRI1のライブイメージング解析により、SPRI1は細胞膜上で粒状の構造を形成することが明らかとなった.一方、この構造体は受粉の有無で特に動態が変動しなかったため、粒状構造は雌蕊において異種花粉応答の条件を作るものであると推察された.一方、SPRI1は四回膜貫通型のタンパク質であるが、SPRI1が足場タンパク質となって細胞膜状で複合体が形成され、異種花粉リジェクト能力が作られているという可能性が考えられた.今後は、蛍光退色回復法や、複合体精製を介してSPRI1の機能を明らかにすることが有効であると考えられた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
(i)ポジティブな花粉排除機構の新奇遺伝変異のスクリーニング 研究当初の予定にはなかった種間不和合性に関わる新しい自然変異を見いだすことができ、その原因遺伝子を同定し機能解析を行なっている. (ii)花粉排除機構を打破する化合物のスクリーニング SPRI1の機能に重要なアミノ酸を多数明らかにし、その制御メカニズムが明らかになりつつある.この知見を足掛かりとして、化合物制御への道筋とする. (iii)ライブイメージングによる異種花粉応答反応の解明 SPRI1を可視化することに成功し、受粉時の動態についての解析結果を得ることができた.SPRI1が複合体を形成するという新たな知見を見出し、現在その機構を解明しようとしている.
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今後の研究の推進方策 |
(i)ポジティブな花粉排除機構の新奇遺伝変異のスクリーニング 引き続き、原因遺伝子の機能解析を行っていく.そしてその機能に基づいて、SPRI1との機能的な関わり、ひいては異種排除プログラムの制御を明らかにする. (ii)花粉排除機構を打破する化合物のスクリーニング SPRI1の機能に重要な役割を果たすアミノ酸を特定できた.今年度は、それらのアミノ酸がどのようにSPRI1を制御するのか?どのような機能的制約があるのか?を明らかにする. (iii)ライブイメージングによる異種花粉応答反応の解明 昨年度はイメージング解析と生化学解析によってSPRI1複合体が存在することを示した.本年度はこの複合体の構成要素や形成条件をさらに明らかにし、異種花粉排除メカニズムの解明へとつなげる.
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