研究課題/領域番号 |
18H02458
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
轟 泰司 静岡大学, 農学部, 教授 (30324338)
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研究分担者 |
岡本 昌憲 宇都宮大学, バイオサイエンス教育研究センター, 准教授 (50455333)
竹内 純 静岡大学, 農学部, 助教 (00776320)
大西 利幸 静岡大学, 農学部, 准教授 (60542165)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | アブシシン酸 |
研究実績の概要 |
イネで機能する新規ABA受容体を見出すことを目的として,イネ・コアコレクション109品種に対するPANSF5(ABA受容体PYLのアンタゴニストであるPANsの中で最も強いABA活性を示す化合物)のイネ第二葉鞘伸長阻害率を「形質の値」としてゲノムワイド関連解析を行い,第3染色体にPANs感受性と関連がありそうなDNA多型を複数見出した。その中で,アミノ酸配列に変異をもたらすDNA多型が存在する遺伝子(例えば,Os03g0661800)に着目し,これら遺伝子がコードするタンパク質を未知ABA受容体の候補タンパク質として選抜した。 受容体とリガンドとの結合を評価する方法はいくつかあるが,その多くは精製タンパク質を用いるものであり,本研究の様に標的候補タンパク質が容易に異種発現・精製できるか分らない場合においては,簡便且つ汎用的な方法でPANs結合活性を評価する必要がある。そこで,標識プローブを用いたラベル化法により候補タンパク質のPANs結合活性を評価するため,アルキンプローブ(PANC≡CH)とアミノ基およびアジド基を有するビオチンタグを合成した。PYLを用いたin vitroモデル試験系においてラベル化条件を最適化し,PANC≡CH依存的にビオチン標識されたPYLのバンドを検出することに成功した。また,PANC≡CHとABAを共処理した際には,競合的にPYLの標識化が抑制されることも確認した。そこで次年度は,候補タンパク質の異種発現系を構築し,上記ラベル化法用いてPANsとの結合を検証する。また,PANsとABAをイネ実生に投与し,qRT-PCRにより候補遺伝子の発現パターンを比較解析する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り,化学遺伝学的手法と生化学的手法を組み合わせることで,イネで機能する新規ABA受容体の探索を進めることができている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度,イネ・コアコレクション109品種を用いてPANSF5による伸長阻害率を「形質の値」としてGWASを行い,第3染色体にPANs感受性と関連があると予想されるDNA多型を複数見出した。その中で,次年度は,アミノ酸配列に変異をもたらすDNA多型が存在する遺伝子(例えば,PDZドメインタンパク質をコードする遺伝子Os03g0661800)に着目し,これら遺伝子がコードするタンパク質(標的候補タンパク質)のPANs結合活性を検証するとともに,ABAシグナル伝達との関連性を調べる。 (1) 標的候補タンパク質の異種発現系を構築する。(2) ラベル化法により標的候補タンパク質のPANs結合活性を評価する。具体的には,精製した候補タンパク質または候補タンパク質を過剰発現させた培養液に,PANsの4'位フェニルプロピニルエーテル鎖の先エチニル基を導入したPANC≡CH(合成済み)を入れ,次にエチニル基を利用してクリック反応によりビオチンタグを付加する。これにアミノ基同士を架橋させるBS3を添加することでビオチンタグと候補タンパク質を共有結合させ,ウェスタンブロッティングにより候補タンパク質のラベル化を検証する。また,PANC≡CHとPANsまたはABAとの共処理を行い,競合的にラベル化が抑制されるかどうかを確認する。(3) (2)の結果,PANsと結合することが証明された候補タンパク質については,qRT-PCRにより,PANsまたはABAを処理した際の遺伝子発現変動を調べることによってABAシグナル伝達との関連性を検証する。
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