研究実績の概要 |
寄生植物は、植物形態の基本的な枠組みを逸脱することなく、従属栄養として生きる能力を独特に進化させた高等植物である。本研究では、アフリカの穀物生産に深刻な被害を及ぼす寄生植物ストライガ(Striga hermonthica)を研究材料に、宿主因子であるストリゴラクトン(SL)の応答に関わる新たな因子の同定を行う。これまでの研究にて、11個のファミリーからなるSL受容体の同定し(Tsuchiya et al., Science, 2015)、その結晶構造の解明にも成功した(Toh et al., Science, 2015)。さらに、受容体活性をin vivoで可視化する蛍光性分子・ヨシムラクトンの創出より、ストライガの根の先端から波のように起こる受容ダイナミクスを観察することが可能となった。これら研究成果は、受容体の進化という観点から、植物の寄生能力の理解を大きく進めたものである一方、その分子機構は不明な点が多い。寄生植物に特有な機構、すなわち、多数のSL受容体が関わるシグナル伝達がどのように統合され、受容ダイナミクスがどのように形成され、それが発芽の意思決定にどう結びつくのか。これらを理解することで、初めてこの寄生能力の全体像を理解することが可能となる。そのためには、受容体と協調して働く新たな遺伝的コンポーネントの同定が必須である。そこで本研究では、独自に整備した情報と低分子ツールを活用し、ストライガにおけるSLシグナル伝達に関わる新たな因子の同定を試みた。
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