研究課題/領域番号 |
18H02461
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
遠藤 求 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 教授 (80551499)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 概日時計 / 植物 / 分化誘導 |
研究実績の概要 |
本研究では、細胞運命決定における概日リズムの役割を明らかにするため、分化誘導系(VISUAL)を用いて、葉肉細胞から維管束細胞への脱分化および再分化過程における概日リズムを1細胞RNA-seqにより解析した。 まず、概日時計が脱分化/分化にどのような影響をおよぼすかを明らかにするため、時計遺伝子変異体cca1lhy toc1やlux noxを用いて子葉を分化誘導した。その結果、すでに分化誘導に関わることが知られているBES1の変異体であるbes1で見られるような分化誘導不全が観察され、概日時計は分化誘導に関わっていることが示唆された。さらにChIP-qPCRにより、BES1がLHYのプロモーターに結合していることを明らかにし、これまで示されていたBES1を介した分化誘導に概日時計が関わっていることが初めて示唆された。 そこで1細胞RNA-seqにより遺伝子発現変動を網羅的に解析し、さらに独自のアルゴリズムによって時系列を再構成するための手法であるPeakMatchを確立した、これを用いた解析から、分化前ではLHYやCCA1といった時計遺伝子の発現が高い一方で、幹細胞時には全ての時計遺伝子の振幅が低下し、分化直前に時計遺伝子LUXの発現が急速に誘導されることを明らかにした。また、LUXは非分化誘導時の芽生えの根端や茎頂部付近で特異的に発現していることもLUCを用いたレポーターアッセイから明らかになり、時計遺伝子LUXが起点となり分化誘導が起こっていることが強く示唆された。 最後にLUCのChIP-seqを行ったところ、予想どおり、細胞分裂や分化に関わる遺伝子が直接の制御標的として同定され、この仮説が裏付けられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究自体は順調に完遂したものの、投稿論文の査読および追加実験に大幅に時間を取られてしまい、期間内にはアクセプトに至らなかった。これまでに、アルゴリズム部分については論文を発表しており、現在は、生物学的な実験部分についてまとめた論文が査読中である。
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今後の研究の推進方策 |
査読中の論文が採択されるよう、必要となる追加実験を適宜行う。またこの過程で非分化誘導の植物における概日時計の発現パターンが地上部で見られるものとは大きく異なっていることが明らかになっていることから、1細胞RNA-seqの結果も活かしつつ、その形成原理を明らかにする。
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