研究課題
本研究では、分化誘導系と1細胞RNA-seq解析を用いることで、植物が脱分化および細分化する過程での概日時計遺伝子の挙動を明らかにした。分化誘導系VISUALを用いて葉肉細胞から維管束細胞へ分化誘導する過程の葉肉細胞を1細胞ずるRNA-seqを実施し、葉肉細胞が道管細胞と師管細胞に分化することから予想されていたように、二股の計上のPseudo-time trajectoryが得られた。このうち、道管系列だけを対象に解析を行った。通常1細胞トランスクリプトーム解析では時間の情報は失われるが、全体の遺伝子発現パターンを指標として時間情報を再構成する新しい方法を開発し、それを用いて葉肉細胞から脱分化し細分化する過程の概日リズムを再構成した。葉肉細胞から脱分化する過程では速やかに概日リズムの消失が見られ、幹細胞と考えられる期間においては概日時計遺伝子のリズムはみられず、これは動物細胞での報告と一致していた。さらに、LUXとよばれる概日リズムの形成に必須である時計遺伝子が幹細胞の後期から発現が急上昇し、その後、分化にしたがって概日リズムが再構成された。LUXのChIP-seq解析からもLUXは分化に関わる遺伝子のプロモーターに結合していることが明らかとなった。こうした成果はCell Reports誌に報告した。さらに、LUXが植物内のどこで発現しているかを詳細に観察するためLUX::LUCを持つ形質転換植物を作出した。その結果、特に根の幹細胞である根端分裂組織部分で高く発現しており、それ以外の細胞ではほとんど発現していないことが明らかになった。このことは分化誘導系で示されたことと同様、LUXは概日リズムの形成初期に関わる時計遺伝子であることが明らかとなった。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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Cell Reports
巻: 40 ページ: 111059
10.1016/j.celrep.2022.1110592022