研究課題
ストライガやオロバンキなどのハマウツボ科寄生植物は、穀物や野菜、花卉類に寄生し、甚大な農業被害を出している。しかし、その寄生の分子機構はほとんど分かっておらず、根本的な防除方法は確立していない。ハマウツボ科寄生植物は、根にコブ状の「吸器」と呼ばれる寄生器官を形成し、宿主植物の組織に侵入する。吸器の形成には宿主由来シグナルが必要であるが、その受容体やシグナル伝達系は未解明である。本研究では、ハマウツボ科条件的寄生植物コシオガマを用いて、分子遺伝学的なアプローチから寄生植物の寄生器官形成の分子機構、特にシグナル伝達に関わる遺伝子を明らかにすることも目的としている。本年度はこれまでに単離した変異体の表現型解析と遺伝子解析、および新たなスクリーニングを行なった。これまでに単離した変異体においては、根の成長阻害を伴うものが多いことが明らかになった。顕微鏡観察の結果、根の伸長領域の細胞数が減少しており、吸器形成と根の伸長に関係があることが示唆された。一方でスクリーニングの結果、新規に4ラインの変異体が単離された。そのうちの一つは、吸器誘導物質に対して全く反応を示さず、根の成長阻害も起こらないことが明らかとなった。これらの変異体について、野生型との戻し交雑を終え、F2世代DNAからゲノムDNAを単離し、シーケンス解析をしたところ、それぞれ数個ずつの候補遺伝子を得た。現在、この変異体の原因遺伝子同定を進めている。
2: おおむね順調に進展している
これまでに取られた変異体の解析を進めながら、新たに有望な変異体が単離できているため、おおむね順調に進展していると考えている。
変異体の遺伝子について、候補遺伝子が得られているので相補試験による遺伝子同定を進める。また、それぞれの変異体について、RNAseq解析を行うことによって、変異原因遺伝子のシグナル伝達経路における位置付けを明確にする。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 3件、 招待講演 3件)
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