研究課題/領域番号 |
18H02466
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
出村 拓 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 教授 (40272009)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | メタボローム解析 / 化学生物学的解析 / 順遺伝学 / ユビキチン化 / 進化的変遷 |
研究実績の概要 |
<マルチオミクス解析による新規因子の同定>タバコおよびシロイヌナズナ培養細胞の道管細胞分化誘導系を用いたマルチオミクス解析として、メタボローム解析を進めた。その結果、VNSレギュロンにポジティブ/ネガティブフィードバックとして影響しうる代謝産物を見いだし、これら代謝産物の生合成の阻害剤5種が道管細胞分化頻度に及ぼす影響を解析した。さらに、これら阻害剤によるトランスクリプトームへの影響を調べるための経時的RNA-seq解析の準備を進めた。 <化学生物学的解析による新規因子の同定>これまでに見いだした「道管細胞に特徴的な螺旋紋の二次細胞壁パターンを強く攪乱する化合物や道管細胞への分化率を特異的に上昇・下降させる化合物」がVNSレギュロンの動態にどのように影響しているかを解析した。さらに、既知の細胞内環境(酸化ストレス、膜交通の撹乱、エピゲノム状態、など)の変化がVNSレギュロンに及ぼす影響を、これら細胞内環境の各種阻害剤の投与によって調べた。 <順遺伝学的手法による新規因子の同定>これまでに、シロイヌナズナVND7-VP16-GR株の種子をEMSで処理した突然変異体プールから、道管細胞分化の抑制変異体(9系統)の取得に成功し、その原因遺伝子の多くが、ユビキチン化といったタンパク質修飾に関わる可能性を示してきた。本研究ではこの可能性をさらに探るために、道管分化過程のユビキチン化タンパク質の動態解析として、道管分化過程のユビキチン化タンパク質のプロテオームに着手した。 <VNSレギュロンの進化的変遷の解析>本研究では、裸子植物におけるVNS転写因子機能の進化的変遷を明らかにするために、蛍光相関分光法を用いたVNSレギュロンの基本構造の推定解析を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
<マルチオミクス解析による新規因子の同定>メタボローム解析については、予想した代謝物の生合成の阻害剤によるトランスクリプトームへの影響を調べるための経時的RNA-seq解析には至らなかったものの、翌年のフラックス解析の準備を含め全体として順調に進んだ。 <化学生物学的解析による新規因子の同定>様々な細胞内環境に影響を与える薬剤の解析を行うことができた。 <順遺伝学的手法による新規因子の同定>ユビキチン化タンパク質のプロテオーム解析に着手できた。 <VNSレギュロンの進化的変遷の解析>裸子植物におけるVNS転写因子機能の進化的変遷を明らかにするための手段として、蛍光相関分光法を用いた解析が可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
1. 新規VNSレギュロン因子の同定(マルチオミクス/化学生物学的/順遺伝学的解析) 昨年度のマルチオミクス解析から、ユビキチン化タンパク質修飾がVNSレギュロンの制御に関わる可能性が強く示唆されるに至った。そこで今年度は、ユビキチン化タンパク質をターゲットとしたプロテオーム解析をさらに推進することで、VNSレギュロンの制御因子を探索し、その機能についての実験的検証を進める。ベンサミタバコ一過的誘導系での道管分化の過程における他の構成因子とのBiFC解析や細胞内局在解析にも取り組む。道管細胞分化抑制変異体については、原因遺伝子の同定を継続するとともに、原因遺伝子の機能解析を順次進め、VNSレギュロンにおける役割を解明する。 2. VNSレギュロンの進化的変遷の解析 進化におけるVNSレギュロンの変遷を転写因子の転写活性化能力と下流シス配列との結合親和性の変遷として読み解く。具体的には、既に確立している一分子蛍光解析装置を用いた蛍光相関分光法(FCS法)による結合解析系を利用し、結合親和性定量データを取得することで、具体的なVNS-シス配列の協調進化の可能性を探る。 3. VNSレギュロンによる通水・支持機能最適化の数理モデル化 上記のデータをもとに、「VNS レギュロン」構造の変遷あるいは可塑的運用に関する数理モデルの構築を行い、ベンサミタバコ一過的誘導系を用いた再構築実験によってモデルの妥当性を検証する。数理モデルの構築にあたっては、当研究室所属の津川暁特任助教の協力を仰ぐ。
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